友は野末に: 九つの短篇
友は野末に: 九つの短篇 / 感想・レビュー
kawa
ナルコプシーという睡眠にかかわる病気をのせいで、幻覚に苦しめられていたと言う著者。それが影響したのだろうか、世間の常識では測ることができないような器を感じさせる異色の短編集。そこはかとなく漂う哀歓とユーモア、また時にはアナーキーに。それなりに楽しめるが、後半はちょっと息切れ、一読では消化しきれない。
2022/01/18
gtn
従兄妹同士の結婚。血の濃さや二人の持病を踏まえ、子を作らなかった。また、元々色川自身、性に淡白であったという。その意味で二人の生活は夫婦というより、同志と言った方が良いか。夫の壮絶な生き様から、長くは一緒に居られないと孝子夫人も覚悟していたとのこと。覚悟どおりとはいえ、余りにも長い夫人の余生を、色川はもう少し縮めてやれなかったか。
2019/12/14
くさてる
好きとか嫌いとか、共感出来るとか分かるとか、そういうレベルをふわりと越えて、圧倒させられる短編集。もう逢えない人、思い出にしかいない人、そのはずだったのに亡霊のようにつきまとう人、血のつながりがある人、無い人…著者がこれまでの人生で出会った人々のことを語る文章は、優しいようでどこか凄まじい。最後に収録された夫人へのインタビューも良かったです。
2015/05/05
たびねこ
現実を書いたエッセーなのか、小説なのか、持病のもたらす幻覚なのか。他の人には見えないものを見てしまい、気づかないことに気づいてしまう。そこに向かって、クセもないムダもない文体できりきりまっすぐ切り込んでいく。いつ読んでも、この人の作品、この人自身に、空恐ろしさを感じる。末尾の対談集が出色。
2015/05/13
しゃが
懐かしくて手に取った。今作でやっとあの阿佐田哲也と色川武大という二つの作家が存在したワケや素顔がわかった。夫人でもいとこでもあった孝子さんへのインタビューからうかがえた彼の言動が作品を支えていたのだということも…。人嫌い、劣等感、病気、父親への強い思いという内なるものを持ちながらも誰をも受け入れ、優しく、豪放磊落な面を同時に持ち合わせていた。戦中、戦後を生きた「私小説作家」らしい作家は色川さんが最後だったのかもしれないと感じた。
2015/05/18
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