サーカスの夜に
サーカスの夜に / 感想・レビュー
風眠
不思議な世界観、過去のような、現代のような、未来のような。幻想的なようでいて、色鮮やかでリアルな雰囲気もある。そんなファンタジックなフィルターを通して、語られるのは人生哲学だ。冷静に見れば、結構悲惨な背景を背負った「流れ者」が集まったサーカスの一団。それなのに不幸な感じが漂っていないのは、サーカスという魔法のせいかな。「サーカスは詩だ、度胸試しを披露する場所じゃない」という団長の言葉が印象的だった。道なき道を走ってきた少年は、虹を渡るような綱渡り師になってゆくのだろうか。余韻が美しく尾を引くラストがいい。
2015/03/11
starbro
人気女性作家二人(よしもとばなな&小川糸)サーカス対決第二弾。今回は小川糸の「サーカスの夜に」です。昔ながらの怪しげなサーカス団(1980代のサントリーローヤルのCM放浪の詩人ランボー篇を思い出します)の中で成長する少年の青春譚。変則的な家族の物語でもあり、小川糸ワールドが展開して行きます。今回の対決では、小川糸に軍配をあげたいと思います。やっぱりタイトルと物語の内容は一致していた方が良いのではないでしょうか?
2015/02/20
hiro
『サーカスの夜に』という題名に引かれて読んだ。冬に-30度になるところのサーカス一座に飛び込んだ、薬の副作用で身長が伸びなくなった13歳の少年の成長譚。糸さんは多くのサーカスを実際観ているそうで、もちろんサーカスのシーンは多いが、それ以上に糸さんらしく料理のシーンが多い作品だった。 少年が綱渡り師になると宣言した日に団長が「死を恐れない奴は必ず落ちる」と諭している。その一方、トロが入団前の訓練もしていない少年に、鉄骨が錆びていて大人が乗ると壊れるかもしれないという危険な高所で作業させたのはおかしいと思う。
2015/02/28
なこ
小川糸さん初読み。「僕は今道なき道を走っている」と、始まりから引き込まれる。大きな変化があるわけではないが、少年が自分の現実を受け入れ、逃げずに、自分の居場所を見つけて行く。それと、小川さんの言葉や表現がすごく綺麗。難しい言葉は使ってないのに心に響いて、優しく包まれるような読後感だった(´-`)
2016/12/30
けんとまん1007
サーカス。最後に生で観たのは、いつだろう?それでも、こころが踊る響きがある言の葉”サーカス”。そんなサーカスの舞台裏を感じさせてくれる物語。サーカスの人たちにも、毎日の暮らし・営みがあり、思いもある。そんな人間臭いところが、とてもよく感じられて、親近感がわく。そんな世界と、少年の成長と葛藤が、いい距離感を保ちながら描かれている。サーカスと言えば、動物、ピエロ・・・・いろいろ浮かぶが、そこにあるストーリーというのも、捨てがたい。それが、サーカスの人たちの思いの裏付けが感じられるとさらに深みが。
2015/09/30
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