国銅 上
国銅 上 / 感想・レビュー
クリママ
奈良時代。長門、奈良登り。地の底、坑道の奥で、夜明け前から日没まで、璞石を掘り、担いで地表にはこぶ。そして釜で炊き、棹銅をつくる。信頼していた兄、欠けがいのない仲間が事故で死ぬ。その中で、山肌に仏像を彫る僧侶から、字と薬草の知識を教わる。この辛く厳しい労役はいったいどういった制度で課されていたのだろう。一人の年若い人足の苦しい生活、食事が細かく記される。そして、聖武天皇による盧舎那仏造立の詔。15人の選ばれた仲間とともに、厳しい舟旅を経て都へ連れて行かれる。
2017/11/04
そうたそ
★★★★★ 奈良の大仏造営のため日夜労役に課する人足。彼らは歴史に名を残すこともなく埋もれていった。この作品の主人公である国人は、行く先々で要領よく技術を身に付け、その人柄も併せて重宝されるとともに、ただの人足とは思えぬほどの教養を身に付けていく。このような者は当世では珍しかっただろうし、大多数の者は国人と共に働いた者たちのように、日々続く労働の疲労と、いつ故郷に帰れるか分からない先行き見えない不安を抱えて死んでいったことだろう。過酷な日常の中にも、決して希望を捨てず働き続ける者たちには心打たれた。
2016/01/01
海の仙人
長門から奈良の都までの長い旅が終わり、いよいよ大仏の鋳造が始まりました。この後、どんな困難が待ち受けているのか・・・。下巻に続く。
2020/04/16
eitah
天平の世、極上の銅を命懸けで掘り出し、精錬して鋳込む若き人足、国人(くにと) の成長物語。奈良の大仏造りに身を捧げ、報われずに散った男達の深き歓びと哀しみを描く大平ロマン。下巻へ。iBooks で読了。
2018/03/07
藤枝梅安
時は天平。奈良東大寺の大仏建立の詔が発せられ、長門の国・奈良登り(現在の山口県美東町、長登銅山)、では、大仏を作る銅の生産が行われていた。人足の一人、国人(くにと)は利発な青年で、この地に居着いた僧・景信との交流の中で、字を覚え、薬草の採取と処方を習った。吹屋頭の娘・絹女(きぬめ)への淡い恋慕を抱きつつ、身分違いと自分を戒める。この銅山から、初め15名が都に送られた。都に着く前に一人が瀬戸内海で投身自殺を遂げ、14名が都にたどり着き、苦役の毎日を過ごす。
2009/08/22
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