国銅 下
国銅 下 / 感想・レビュー
海の仙人
「あの大仏の目にも、自分たち人足は蟻のように映っているのだろうか」名もない課役人足達がそれぞれの思いを胸に、棹銅づくりや大仏の建立に立ち向かっていく姿が丁寧に描かれている。数多の無名人の命が盧舎那仏に宿っていることに感銘。期せずして映像作家の保山耕一氏の「奈良 時の雫」を知り、遠い奈良の都を再訪したいと願いながら読了。良書との出会いに感謝です。
2020/04/18
そうたそ
★★★★★
2016/01/02
湖球
溶銅が大仏の体に流れ込む様はまるで赤い大蛇が大仏に走り寄っていき、辺り一面の白い 煙の上には命を注がれた仏の顔があった・・。 「大仏の建立」という名の重厚で荘厳な絵巻物が、目の前で繰り広げられる感覚に陥る読後感。 人足である国人だが、課役に負われながらも様々な出会い別れを経験し失意の時でさえ月下で漢詩学びに当てる、その生き方は恩師、影信の言葉「仏は自分自身で、心に在するもの」と悟りきった生き方だったのか?ただ一人課役を終えて長門に戻り待ち受けていた二つの死は余りにも物悲しく切ない。もう一度精読したい作品。
2016/11/28
tama
図書館本 大変大変興味深く読めました。時間経過の書き方が滑らかですね。奈良時代の「旅」の大変さとか、いのちの値段の安さとかがお話の材料として美味しく料理されてました。
2013/07/15
藤枝梅安
都では2人の衛士と詩を詠み合い、交流を持つ。薬草を取りに出かけた若草山で猟師の二見(ふたみ)と出会い、その妹・日狭女(ひさめ)と逢瀬を重ねる。長門から送られてきた14人の人足のうち、一人は工事現場で足場から落ちて命を落とす。残った13人のうち、10人は3年の年季を終え、長門に帰った。大仏開眼の直後、病に臥していた日狭女はこの世を去る。国人と同郷の道足、猪手の3人にも、国に帰ってよいとの命が下る。能登の国から来ていた逆(さかさ)も国に帰る事になり、逆の勧めで、若狭から海路西に向かうことにした。
2009/08/22
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