水神(下)
水神(下) / 感想・レビュー
ケイ
水をひくために命をかけた五庄屋の話を書くにあたって、どの辺りから創作されたのだろう。登場人物が魅力的で本当に実在して欲しい人ばかりだ。最後に水門を開ける日、各村から人が集まり、水が流れ出すとそれを知らせる狼煙が次々に上がっていく様子は目に見えるようだった。命を賭した武士は残念だったが、それ以外は話がうまく流れていきすぎで、童話のように感じるところも。『恩讐の彼方に』のように、一大事を成し遂げる時には、人の醜いところもあらわれるものではないか。作家がとても心根の優しい人なのだと思う。
2014/01/05
も
素晴らしかった。 堰造りに賛成した村の人も反対した村の人も力を合わせて夫役にあたる姿。水門を開けるその日、次々と狼煙が上がり、待ち望んだ水が龍のごとく流れてくるのを見守る村人たち。人々の歓声と歓喜の声が聞こえてきそうでした。工事に反対した庄屋、藤兵衛との和解のシーンが印象的。「どの庄屋もこれから先のこつば口にするとです。」土地が潤ったらとこの先の村を考えて目を輝かせながら語り合う庄屋たちがうかびました。
2016/07/18
tomi
工事が失敗すれば庄屋たちは処刑!五本の磔柱が建てられるなか、遂に大工事が始まる。命と身代を賭ける五人の庄屋たち。工事の成功を見守り、犠牲となる菊竹下奉行。打桶に勤しんできた元助ら借り出された各村の百姓たち。それぞれが江南原を水の豊かな土地にするために団結して励む姿は清々しく感動的。元助の恋と犬の権がいいアクセントになっている。(新田次郎文学賞受賞作)
2017/09/23
だいきょ
敬愛する著者だと言うことを差し引いても、最近読んだ中では最も感動した小説です。最終章は涙なしでは読めませんでした。 実在する堰を作る話なので、最後は絶対完成すると言う確信はあったものの、登場人物がみんな生き生きしていて最後まで惹きつけられました。 近いうちに舞台である久留米の大石堰を訪れよう、と決心して本を閉じました。
2012/10/03
うしこ@灯れ松明の火(文庫フリークさんに賛同)
今、生死をかけた一大事業が始まった。成功すれば付近の田畑は潤い、失敗すれば五庄屋は磔にされる。果たして…。庄屋と言えば強欲で百姓泣かせという勝手なイメージがあったのですが、この話に登場した庄屋は本当に百姓のことを考えてくれる良い庄屋でした。そして最後まで彼らのことを気にかけてくれた下奉行の菊竹様。彼が書いた嘆願書には思わず涙しました。希望ある未来を語れることがどれだけ人を明るく、そして強くするのか。教えられた気がします。★★★★
2011/07/30
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