移された顔
移された顔 / 感想・レビュー
いつでも母さん
臓器移植は知っていた(知っていたと云うだけなのだが)が、『顔移植』は初めて知る。火傷とかの皮膚移植とは根本的に違う・・これは小説なのだが、とても深い問題提起ですね。臓器移植とてまだまだ牛歩の如く、脳死判定が絡むとますます医学的には遅れる日本。ドナーと家族、レシピエント本人と家族・・何が正しいか私には正直解らない。あとがきも含めて帚木蓬生の真骨頂ですね!『顔のない顔』にギュッと心を鷲掴みされた感。タイトル作は戯曲なので苦手な自分にはちょっと読みづらく、感情移入も難しかったが一気に読了。
2015/07/01
itica
顔移植は全く夢物語ではなく、実際に全面顔移植も世界で数例あることを初めて知った。何らかの事故で顔を失って、それでも生きてゆくのは精神的にも大変なことだろう。しかし安易に顔を移植すれば済む問題では無さそうだ。帚木氏は臓器移植をテーマにした小説をいくつか書かれておられるが、倫理面、拒絶反応、ドナーや家族への配慮など、移植にはクリアしなければならない問題が多々あることを示唆されている。全く別の顔を移植されて、それでも「私は私だ」と言えるのか、想像するのは難しい。
2013/10/19
*すずらん*
臓器移植という言葉ならいざ知らず、顔移植という言葉にインパクトを受けました。まだ世界で数例しか行われていません。慣れ親しんだ自らの顔を失い、見ず知らずの顔になる。私は私であるのに鏡に映るのはドナーの顔。まるで人格まで変わってしまったかの様な戸惑いは、どれだけの心労を伴うのか計り知る事ができません。移植と一言で括っても、見ることはできない臓器と見ない訳にはいかない顔とでは、こんなに違う物なのですね。外見は人格形成にとても影響を及ぼすのだという事がわかりました。ドナーから命を戴く。そこには非常な重さがあります
2013/09/02
冴子
実際に世界では既に顔移植が行われていたのは驚きだった。移植自体まだまだ難しい問題を抱えているので、顔移植となると医療面だけでない難しさがありそう。帚木さんならではの話を、初めての戯曲でかかれたのは意外だった。
2015/06/26
るんるん
顔を失った女性の苦しみ、移植にともなう悩みや葛藤など、顔と人の心理が丁寧に描かれている。戯曲作品では、ドナーの母親の心理や死の概念を説明する医師の苦しみ、移植にともなうレシピエント側の心の拒絶が緊張感を持って伝わってくる。脳死宣告においては実際現場でもこのような会話があるのかもと、想像させられる。術後も、人生に前向きになれるまでのりこえていくたくさんの壁がある。医療関係者がサポートする課題は大きく、臓器移植が抱える問題は山積み。精神科医でもある著者さんならではの本だなぁ、と思いました。
2015/02/02
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