楽園のカンヴァス
楽園のカンヴァス / 感想・レビュー
ヴェネツィア
物語冒頭の「一介の監視員」という言い方にも抵抗を感じるし、そこからのシンデレラ・ストーリーめいた展開にも、安直な感を持ちつつ読み始めた。ところが、ピカソの登場あたりから、物語は息もつかせぬスピードで展開し始め、「物語」の作者という最後の謎解きには、もう感嘆するばかりだった。エンディングも、あまりにも予想通りとはいえ、思わず感涙が抑えられない。物語を読む楽しみに満ち満ちた作品だ。しかも、物語は二重の時を刻み、私たち読者もまた二重の時を体験できる贅沢さだ。読みながら、何度ルソーの絵を取り出して眺めたことか。
2014/09/23
サム・ミイラ
絵画のミステリーであり同時に時を超える愛の物語。これほど知的に好奇心を掻き立てながら推理する楽しさと感動が溢れる作品を私は他に知らない。ピカソとルソーという二人の天才画家の邂逅。近代美術の黎明期を綴った古書。そしてルソーの代表作「夢」と酷似する謎の絵画と真贋の行方。鑑定者二人の物語でありルソーとヤドヴィガの恋の物語でもある。絵画を観る事とはそれを描いた「人」の人生を見ること。改めて教えられた気がする。気づけば郷土の美術館に来ていた。あまり知らなかったシャガールの事をもっと知りたくなった。
2015/03/19
遥かなる想い
原田マハが織り成す絵画ミステリー。 名画がもたらす画家の想い、時代性のようなものを上品に 読者に伝えてくれる。 1983年の7日間、そこで一体何があったのか? 二人の研究者が読んでいた物語は 何を語っていたのか?ルソーの「夢を見た」という 絵が示すものは何なのか?著者が持つ美術史に関する造詣が、創り出す19世紀初頭の フランスの雰囲気が心地よい。 本の帯にあるルソーの「夢」を何回も 確認しながら、世界を、時代を巡る楽しみ。絵画に対する情熱の ようなものが、時代を越えて読者に伝わってくる、そんな作品だった。
2013/10/14
にいにい
原田マハさんの初読了作。ルソー絵画の謎に迫る著者の造詣深さに脱帽。美術史の謎解きミステリーとして素敵な作品。史実を元にルソーとヤドヴィガ、ピカソの関係、ルソーの魅力を引き出した本。ルソー絵画の真贋を巡り複数の物語が示される。それと並行して祖父と孫娘、母と娘、恋人の関係。更には、絵画で利益をもくろむ組織の暗躍とそれを阻止する力が蠢く。ティム・ブラウンと早川織絵の絵画を友とする心が素敵すぎる。物語の中のヤドヴィガの心理描写もよかった。講評の瞬間とバイラーの正体が見物。面白かった。他の原田作品も読むぞ。
2013/12/21
zero1
絵画は永遠を生き、物語と情熱がある。優れた美術ミステリー。スイスに呼ばれたMoMAのアシスタントキュレーター、ブラウンは「夢」(ルソー)に似た絵の真贋を鑑定することに。その場にはソルボンヌ出の俊英、早川織絵もいた。7日間で物語を読み講評。勝者にはこの絵を所有できる。この鑑定にICPOとクリスティーズが絡む。ピカソや絵のモデルとなったヤドヴィガと夫など、「人に歴史あり」。絵の秘密に織絵の背後関係など、再読でも興味深く読めたが結末は予測できず。13年本屋大賞3位は納得。マハの才能が炸裂!美術に興味を持つ一冊。
2019/06/05
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