あのひとは蜘蛛を潰せない
あのひとは蜘蛛を潰せない / 感想・レビュー
文庫フリーク@灯れ松明の火
昔、母から言われた「みっともない」には(育てた親として)「世間体が悪い」の意味が含まれていたように思う。28歳の女性として、一人の人間として、自立できていないことにコンプレックス抱く梨枝。文豪気取る訳ではないが「恥の多い生涯を送ってきた」私には、生々しさが読んでいて辛くなる。大きな事件・騒動もなく極めて普通の女性の物語。なのに、指先の切り傷のように薄く血が滲むような些細な傷が、そこに心臓があるかのようにドクン、ドクンと鼓動するような痛み。これは女性の方が痛みと共に実感として感じるのだろうな。自分の気持ち→
2015/06/11
なゆ
『骨を彩る』がとても良かったので早速。表現しづらいような感情や不安を、あまり重くなりすぎずに文章にするのが上手いな。自分と誰かとの距離のとり方が不器用な人の、心の内側の細かな襞までもが言葉に置き換えられているよう。「みっともない」をはじめとする母親の言葉にがんじがらめに、言いたい事も飲みこんで28年も生きてきた梨絵。ストレートに物を言う年下彼氏の三葉くんとの付き合いが、彼女を変化させてゆく。梨絵だけでなく、息子夫婦との同居で変わってゆく母親や、雪ちゃんやバファリン女、みんな弱さを誤魔化しながら生きてる。
2014/02/18
おしゃべりメガネ
期待どおりの彩瀬さんワールドで、正直千早さんとの作風の区別がつかなくなってきている自分もいますが、それでも彩瀬さんのしっとり&しっかりな世界観は読んでいて落ち着きます。決して癒されるワケではないのですが、出てくる人物たちが過剰に背伸びしているワケでもなく、とても普通に自分に身の丈のあったキモチで自分をうつしている描写が、ある意味とても新鮮です。アラサーの少し陰のあるドラッグストアの女性店長「梨枝」とその母親との葛藤、年下の男性との恋愛、職場での軋轢など、日常のありふれたひとコマに惹きつけられてしまいます。
2016/03/21
紫 綺
ドラッグストアの店長梨枝、母の厳しい躾に縛られる28歳。恋や職場環境、家族からの独立などを通じ、精神的に成長していく。他人の目を気にし、いい子でいなければならない呪縛から解き放たれる。
2016/10/02
yoshida
ドラッグストアの店長の梨枝。梨枝はずっと実家住まいで母と暮らす。勤務先で恋人ができ、兄夫婦が転勤で戻る為、初めての一人暮らしを始める。描かれる母娘の確執。培われて来た自分の常識と他者とのギャップ。恋人も義姉も育ってきた環境が違うので、すれ違いや感覚のギャップは仕方ない。人物の描写がリアルでヒヤリとした。例えば梨枝が年下の恋人に様々なモノを買い与える様子。恋人の感じる居心地の悪さは、彼の善良さの証。梨枝の行動も理解出来る気がする。職場で部下と飲みに行って奢る感覚に近いだろうか。希望はあるラスト。良作でした。
2019/05/26
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