ひりつく夜の音
ひりつく夜の音 / 感想・レビュー
いつでも母さん
今頃の読書だが、小野寺さんの小説っぽいと感じた。(褒めてます)悪人は出て来ない。ディキシーランド・ジャズのクラリネット奏者・下田保幸46歳。バンドが解散してから新たに再生するまで。そこにはかつての恋人の息子が現れてそこから新しく動き出す心の持ちようが好い。40代だって人生は再始動するのだ。朝食海賊で知り合った岸弁護士が要所でいい仕事をしていた。『下田保幸とオーファンズ』のジャズライブに行ってみたい。無性にジャズが聴きたくなった。
2019/10/05
おしゃべりメガネ
本屋大賞ノミネート作品『ひと』の原点みたいなモノを本作に感じました。四十半ばのクラリネット奏者「下田」は1人で特に抑揚のない生活を送っています。そんなある日、1人の若者の引き受け人を依頼されるコトに。名前を聞くと若い頃付き合っていた女性と同じ苗字であることがわかり、引き取りに向かいます。サスペンスでもなく、ミステリーでもなく、特段ほっこりするワケでもないのですが、人間それぞれの自分に正直な生き方や思いがストレートに綴られており、人間やりたいコトがあったら、まだまだチャレンジしてみるべきかなと思います。
2019/03/01
utinopoti27
47歳の男が泣いている。若かりし頃の粗削りな情熱に、心を揺さぶられて泣いている・・。クラリネット奏者の下田保幸は、音楽教室の講師を務めながら倹しい生活を送っている中年男。そんなある日、彼の目の前に現れたギタリストの青年が、消えかけていた彼の情熱に再び火をつける。少しづつ、ゆっくりと動き出す、忘れていた時の流れ。とくに目立つ出来事が起こるわけでもない、ただ淡々と綴られる感情の揺らぎが、穏やかな感動を紡ぎ出してゆく。大人の小説とはこういうものなのだろう。一人だけの静かな夜に、じっくり余韻に浸りたい作品だ。
2021/02/09
モルク
大人になってから泣いたことのない47才の男がむせび泣く。そんな出だしで始まり食いつく。仕事も減り教室の講師が主たる収入になったデキシーランドジャズのクラリネット奏者の下田。ちくわを挟んだ食パン、豆腐に薬味も調味料もかけずパックごと汁まで飲む、生活に花を添える週に一度の朝食海賊と細々とした下田の生活ぶり。そんな彼の前に元恋人の遺児であるギタリスト音矢が現れる。彼に危ういものを感じながら、下田も彼に刺激を受け新たな展開が始まる。今回も小野寺節堪能。そうそう、よつば駅前のバー「ソーアン」も登場。
2021/03/18
ユザキ部長
46歳。一見冴えないオッサンの話。集まる皆はその人なりのルールとマナーと譲れないものとがあって、キチンとしてる所があって、なかなか味わい深い。冴えないオッサンはクラリネットを吹く。そのバンドは観客は楽しそう。みんな普通に真っ直ぐでわざとらしく戯れる。
2019/10/16
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