手のひらの京
手のひらの京 / 感想・レビュー
ヴェネツィア
京都の四季を背景に織りなす三姉妹の物語。すぐに想起されるのは川端の『古都』である。また、谷崎の『細雪』(こちらは四姉妹だが)も。おそらく、そうした指摘は既になされているだろう。また、綿矢自身にもそうした意識は働いていたであろう。小説は、二人の姉とも両親ともニュートラルな位置を採る三女の凛が扇の要として配置され、長女の綾香、次女の羽依がそれぞれの華を開かせるという構造をとる。それぞれの女性たちの感情の揺れ動きがプロットを構成するが、物語の場としての閉じられた"京都"という空間はいわば絶対条件であった。
2020/12/18
starbro
綿矢りさは、新作中心に読んでいる作家です。本作は中編ですが、中身の詰まった綿矢りさ版「細雪」でした。京都人ならではの情景・機微・言い回し、堪能しました。1200年超の歴史のある京都の「いけず」は怖そうですネ。京都に何度か行っていますが、高校の修学旅行以来、観光をしたことがないので、何時かゆっくり旅行してみたいなぁ!
2016/10/30
milk tea
「京都の空はどうも柔らかい。頭上に広がる淡い水色に、綿菓子をちぎった雲の一片がふわふわと浮いている。鴨川から眺める空は清々しくも甘い気配に満ちている。」 素敵な書き出しで、読む側もテンション上がります。京都の季節の移り変わりとともに三姉妹が成長して行く。羽依の元カレ・前川が異動になり上司に絞られてるようで、これにはスッキリ。パワハラは絶対ダメ。羽依はこれからどうなるのか楽しみだし、三女・凛も社会人になったばかり。まだまだ目が離せない感じで、この先の成長も見守りたいですね。終わり方も満足で、面白かったです。
2017/09/17
hiro
三浦しをん版『細雪』の『あの家に暮らす四人の女』を先に読んだが、これは京都出身の綿矢さんの京都を舞台にした奥沢家の三姉妹が主人公の綿矢版『細雪』。三十を過ぎて結婚に焦りを感じている長女・綾香、恋愛経験の豊富で会社のお局様にも啖呵が切れる次女・羽依、男性と付き合ったこともなく就職して京都から出ていきたい大学院生の三女・凛、この個性が違う三姉妹の京都での一年を描いており、地名・ことば・行事等々、京都らしさが満載であり、一方今までの綿矢作品と共通するところも多く、綿矢さんらしい作品で十分楽しむことができた。
2016/12/12
ナイスネイチャ
図書館本。京都に生まれ育った3人の娘と京都で育まれた風景。京都という特質の土地柄。受け入れるということを拒んでいるイメージがふんだんに出てました。
2017/03/14
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