正欲
正欲 / 感想・レビュー
ヴェネツィア
対幻想が社会のあたりまえの構成要素であると信じて疑うことがない、おめでたくも無神経な種族(マジョリティはこれなのだが)に属する私にはとうてい想像も及ばない世界である。フェティシズムは理解の範疇にあるが、それもあくまでも人間に関わってのこと。私の想像の限界は(閾値を超えているような気もするが)ネクロフィリアまでである。これは「中身の見えるプラスティックカップに水を移し替えていく」ことに耽美と(性的な)陶酔(あるいは恍惚)を感じる人たちの物語である。重ねて聞くが、ほんとうなのだろうか?
2021/10/20
パトラッシュ
LGBTQなど性的多様性を認めることが正しいとされるようになったが、皆が同じで当然という日本では性的少数派が自らを公表するのは難しい。まして今も犯罪扱いを免れない児童ポルノでしか性的満足を得られない人には、現代は昔からの仲間が次々と消えつつある状況ではないか。そんな追いつめられた性的少数派が必死に自らの性癖を隠そうとあがき、ネットを通じて繋がりを求める姿を生々しく描いていく。ただ自分は同調圧力や忖度など気にせず他人と深い関係も求めない性格なので、これほど周囲を気にして怯えて生きる感覚が理解できないのだが。
2021/04/19
青乃108号
性的嗜好のマイノリティ達の狭量な世界観ばかりが延々と綴られた物語。その皆が皆、私ばかりが皆と違って孤独なんだ、誰にもわかってもらえないんだと世の中を呪う。しかし、人間なんてそもそも性的嗜好だけで区分できるものじゃないだろう。もっと、思想だとか性格だとか健康状態だとか障害の有無やその程度や。結局、総合的に見れば多数派なんて皆無で、世の中の皆が皆、何かしら生き辛さを抱えたままで、それでも何とか折り合いをつけて毎日生きているんだよ。俺だってそうだよ。被害者ぶって不満ばかり言ってないで、どうせ皆一緒なんだから。
2022/06/20
ろくせい@やまもとかねよし
多様な個人を満たす社会はあるのか。生物本能とヒト特有意識で生じる矛盾を鋭く描く。生物は個体が生き延びるため、食べて、休む。そして集団維持で子孫を産む。私たちは自己意識を抱え、社会の中で自分の生存と子孫繁栄を満足させようと志向。人間社会の秩序は多数が満足するルールで制御。そこでは子孫繁栄の引き金は異性に限定され、性行為で完了。異性ではない性的衝動も少数派として多数に組み込まれる。生きることに大切な自己意識。時にこれがルールから逸脱した性的衝動に。これは少数派にも含まれない。社会が許容するは限定的な多様性か。
2022/03/26
starbro
朝井 リョウは、新作をコンスタントに読んでいる作家です。 著者の作家生活十周年記念作品[黒版]として期待して読みました。正しい欲望なんて存在しない気もしますが、多様性の名の下に正当化されるのでしょうか? 私は極めてノーマルですが、巷にはアブノーマル、変態が溢れているのでしょうか? https://www.shinchosha.co.jp/seiyoku/
2021/05/06
感想・レビューをもっと見る