あとかた
あとかた / 感想・レビュー
風眠
ビルから飛び降り自殺した男の気配が、ひとつひとつの物語を繋いでいる。もやもやを抱えながら閉塞した日常を生きるそれぞれの物語に、忍び込んでくる何か取り返しがつかないようなもの。結婚直前に浮気する女、妻の異変に気付かない夫、不倫する妻、体を傷つけることでしか愛を信じられない少女、はっきりしない青年、寂しさを恋人に打ち明けられない女。逃げても逃げても、生きている限りは逃れられない苦悩。今は誰にも打ち明けられない涙を流していたとしても、生きた「あとかた」を刻みながら生きていく。静かな力強さのある連作短篇集。
2014/02/22
おしゃべりメガネ
ある程度の予感はしてましたが、やはりこの作家さんの雰囲気(作風)は只者ではない感じがガンガン伝わります。『眠りの庭』を読了直後は正直、そうでもないかなという印象でしたが、時間が経つにつれ、もう一度読みたくなる世界観でジワジワと中毒性を発揮してくるタイプです。本作も6編から連なる連作集ですが、各々の章の人物やストーリーがとてもキレイに纏められており、グイグイと「千早ワールド」に染められていきます。桜木さんほど暗くはなく、真梨さんほどヘヴィではなく、上品かつ、ひそやかなエロスがあり、他作品も気になります。
2014/10/23
❁かな❁
千早茜さん初読みでしたが大人の女性にぴったりな作風でとても良かったです☆6編の連作短編集。後ろめたいような男女の関係のお話なので全体的に静かでひっそりした空気を感じます。それぞれ心の中にいろんな思いを抱えていて暗い雰囲気もありますが文章がとても読みやすく淡々と語られていきました。いつもは明るいほっこり系の作品が好きなのですが千早さんは違う雰囲気なのにまた読みたい作家さんだと思いました。「うろこ」が一番お気に入り!松本くん良かったです♪「ねいろ」の水草くんの言葉も「ゆびわ」の最後も切なくて良かったです☆
2013/11/04
ナイスネイチャ
図書館本。初読み作家さん。短編連作集で個々の章での主人公の名前も出てこないが徐々に別の主人公目線で人物像が浮かび上がってくる様になっていて、かなり面白かったです。「あとかた」目に見える傷痕と心の傷痕、描写が好きです。あとコンタクトレンズや金魚など小物の描写も凄くはまりました。
2014/07/19
ガクガク
千早茜初読。6編の連作短編集。装丁も各編のタイトルもいい。各編の登場人物がそれぞれ主人公として描かれるが、連作としてのまとまりはさほど感じられない。変わらないものなんて何もないこの世界で、自分が人とどう繋がり、愛し合い、傷つけながらも生きていかなければならないのか、そのヒリヒリするような感覚を透明感のある美しい言葉で綴る。最初の「ほむら」だけはちょっと違うテイスト。「やけど」と「うろこ」はセットで読むと心が落ち着く。「ゆびわ」は最も哀切で読後は苦しい。
2013/12/30
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