KADOKAWA Group

Facebook X(旧Twitter) LINE はてブ Instagram Pinterest

手のひらの音符

手のひらの音符

手のひらの音符

作家
藤岡陽子
出版社
新潮社
発売日
2014-01-22
ISBN
9784103348719
amazonで購入する

手のひらの音符 / 感想・レビュー

powerd by 読書メーター

風眠

生まれながらに恵まれた人はいても、生まれながらに幸せな人は本当はいないのだと思う。生きていれば、耐えられないほどの理不尽や苦しい現実にブチ当たることだってある。辛くないはずはない、辛いに決まっている。それでも人は顔を上げて生きていこうとする。よそ行きの笑顔で、何でもないような顔をして。貧困、精神疾患、いじめ、秘めた恋、介護、そして覚悟。さまざまな人生のさまざまな重たいこと。それらがラストに向かって収束していくにつれ、そうだったの・・・という切なさが溢れ、涙となって落ちた。温かな力強さと決意が心に響く物語。

2014/03/03

文庫フリーク@灯れ松明の火

なぜこの作品が本屋大賞にノミネートされないのでしょう?歳を重ね厚くなった面の皮と硬くなった感性。その陰に隠れ、自分自身でも忘れていた心の柔らかな部分から薄く血をにじませるような、温かな手で優しく揉みほぐされるような。派手な事件やアクションは皆無、けれどこの物語の中に、リアルな「自分」が居ると感じてしまうのです。私はこれまで、この手のひらの中に何を握りしめ生きてきたのか、私は私の闘い方をしてきたのか、自身を振り返ってしまいます。祈りを込めて一針一針縫い付けるドとミの音符。一番大事な水樹の「ミ」に12年の→

2015/02/03

しんたろー

藤岡さん3冊目。現在と過去が行き来しつつ淡々と描かれているが、ところどころに思わず読み返してしまうシミジミとした心理描写があって、何回か溜息をついた……特に昭和の京都を舞台にした子供時代の話には、自分自身の遠い思い出が蘇ってくるような懐かしさを覚えて胸がキュンとした。主人公・水樹 は勿論のこと、貧しくても辛くても懸命に生きていた少年たち の姿がキラキラして、切なくも愛おしい。更に、幼友達・信也 との不器用なラブストーリーにも心が洗われる想いになった。 人生の機微を繊細に描ける藤岡さんは、ハズレがないなぁ。

2017/03/30

名古屋ケムンパス

リストラを言い渡される45歳の服飾デザイナーの水樹。音信の途絶えていた高校の同級生からの恩師の病状を知らせる電話が埋もれさせていたはずの幼少期からの記憶を呼び起こします。「絶対に会いに行く」との言葉を掛けられたまま別れた同じ団地で暮らした幼なじみの信也との思い出。貧しいなか、ご近所同士で助け合って暮らすのが当たり前だった時代に自らの郷愁を綯い交ぜにして、信也たち兄弟の思いやりに溢れる言葉に眼鏡が何度も曇ってしまいました。愚直に生きることを応援してくれる人がきっといると勇気を与えてくれる美しい作品です。

2015/05/27

あすなろ

藤岡作品、2冊目読了。混じりっけなき泣節が多い方も思う。例えば、人と人が別れる時、それが最後になることをお互い知っている別れは、この世にどれくらいあるのだろう。軽薄でもなく、演歌チックでもなくからりと捻りある泣節。それらが散りばめられた本作は、幼き日の憧憬や哀しみと混じり合い泣きを誘う。そして、直球の長い年月を超えた恋愛物語。藤岡作品、まだまだ追っかけてみたい。筆力に期待!

2016/01/15

感想・レビューをもっと見る