星の民のクリスマス
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星の民のクリスマス / 感想・レビュー
けい
25回ファンタジーノベル大賞作品。今作がデビュー作。娘のために作家である父が綴った一遍の物語、その物語を大事に大事にしてきた娘がクリスマスの夜にいなくなる。作家の意思とは関係なし独自に綴られて行く物語の中に娘は迷い込む。いや、帰って行く。そこにはすごく現実的で幻想的な世界が広がり、読む側の思考を大いに振ってくれます。そして少女と伴に新しい時代へ。ファンタジーなんだけどすごく現実的で、それでいてやさしくて、面白い世界観へ連れて行ってくれる作品でした。
2013/12/10
がらくたどん
直近『フィールダー』が印象深い著者のデビュー作は「クリスマス」の話らしいと伺って。表紙がカワイイ。題名もカワイイ。妻を亡くした歴史小説家のパパが幼い娘にクリスマスの童話を書いて贈っている。なんてカワイイ。近作で問題とされた「かわいい」を無自覚に大量消費しながら読み始め、メタバース的な構造の穴にドボンと落っこちた。ある小世界を秩序付ける概念構造は概ね上位世界による恣意的な概念規定で決まるというのは多層構造を描くSFの定番だが、上位世界のテキストがポンコツ過ぎて下位世界が勝手に余白を埋めだす流れが面白い。
2022/11/18
カナティ
日本ファンタジーノベル大賞受賞作。とっても可愛らしい装丁とタイトルに惹かれて手に取りました。ワクワクしながら読み始めたのですが、ページに小さい文字がギッシリなのと、少し読みづらい印象があって時間がかかってしまったものの、読み進めていくうちにこの独特の世界観に慣れてくると先が気になってサクサクと進みます。可愛い表紙とは違って残酷でビターなファンタジーですが、読んでいる間は自分も本の世界を一緒に冒険しているかのような心地でした。著者の好きなミヒャエル・エンデの影響を受けているのがよくわかる作品です。
2014/01/13
しょこら★
すっかり時期はずれなんだけど、クリスマス直前のキラキラとうきうきが胸にいっぱいひろがって幸せ。歴史小説家の父親が、娘・カマリに贈ったつたない物語ー大切で愛しい贈り物に、カマリはいつしか迷いこむ。不思議の国のアリスみたいに、どこかつじつまが合わなくて、どこか理屈めいたお話。優しいお父さん、おおらかなおやじさん、偏屈なキツツキの子。クリスマスの夜に散るキラキラ贈り物、あたたかなアップルサイダー。ドキドキの脱獄。宗教や歴史についても考えさせられる、きれいなファンタジーでした。
2014/03/04
むぎじる
歴史小説家の父親が、4歳の娘のためだけに描いた初めての童話。その町は一年中雪が降り積もり、サンタクロースは1年に1回配るプレゼントを作っている。金と銀の角を持つトナカイやキツツキの子が登場するその童話の世界に、10歳になった娘が迷い込む。娘が入り込んだ童話の町は、読んでいた童話とは全く違う世界だったけれど、その中で自分の居場所を見つけながら、少しずつ成長していく娘の様子がよかった。丁寧な文章が、翻訳物の小説を読んでいるように感じた。
2013/12/14
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