悟浄出立
悟浄出立 / 感想・レビュー
れみ
三蔵法師の天竺への旅のお供をする沙悟浄が主人公のお話(表題作)。タイトルをみて気づくべきだったけど「悟浄出世」や「李陵」など中島敦さんの作品へのオマージュが込められた作品だということに途中で気づいた^^;中国ものの歴史物語に詳しければとても楽しめるとは思うけど、私のようにそれほど知らなくても物語そのものを楽しむことができる作品。いちばん好きなのは「虞姫寂静」かな。でもどれもそれぞれに面白い。
2014/10/05
風眠
主役が輝けるのは、魅力的な脇役がいるからこそ。脇役として物語の中に生きる者たちが、自己を見出していく過程からは、主役ほど華々しくはなくても語るべき人生はあるんだって、親近感がある。表題作『悟浄出立』には、思わず笑ってしまうような可笑しみがあり、直木賞候補に選ばれたことにも頷ける。中国古典は、ぼんやりとしか知らなかったけれど、それぞれの物語を楽しむ事ができた。『虞姫静寂』は、項羽の寵姫となった虞の静かな情念を描いているが、夢の続きのように何となく儚くて、美しい幻を見たようで、ちりちりと静かに心揺さぶられた。
2015/06/12
takaC
西遊記とか三国志とかの元ネタ古典のスピンオフ風な話でなかなか面白かった。/悟浄出立(沙悟浄の話)『yomyom』Vol.10(2009/2)/趙雲西航(趙雲子龍の話)『yomyom』Vol.10(2009/11)/虞姫寂静(劉邦妃虞美人の話)『yomyom』Vol.13(2013/11)/法家孤憤(京科と荊軻(どちらも誰それ?)の話)『yomyom』Vol.31(2014/2)/父司馬遷(司馬遷の娘の話)『yomyom』Vol.32(2014/5)/
2016/04/11
kishikan
万城目さんて、ホルモーの時から懐古調の気配を感じていたけれど、どんどんそれが濃くなっているね。本作の舞台は中国、西遊記、三国志、虞美人や始皇帝暗殺を企てた荊軻、司馬遷にまつわる歴史の話を見事に解釈、ドラマ化した5作品。少しでも、元の話を知っていればのめりこめるし、知らない方はウィキペディアで調べながら読み進めましょう。面白いです。僕としては西遊記に関連した「悟浄出立」、悟浄の視点で特に猪八戒を中心にした書き方が、これまで読んだこともなくて出色の作品。万城目さんGoodです。今度は長編でお願いします。
2015/01/31
にいにい
久しぶりの万城目学さん。京都、奈良、大阪、次は近畿の何処と思っていたら、いきなり中国しかも海を越えて、古典短篇連作の中に新たな境地を見出したのかな。西遊記、三国志等の脇役に光を当て、人の生き様を描く。奇想天外な演出を期待している読者には不満な「まじめをまなぶ」作品集。『法家孤憤』、『父司馬遷』の繋がりや登場人物たちの心情の描写が深い。静寂に熱さを感じる一冊。中国古典を読み返したくなったなぁ~。
2015/01/11
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