月まで三キロ
月まで三キロ / 感想・レビュー
kou
それぞれが、自然を対象にした職業を絡めた短編集だった。どの話も、読後感が良く優しい余韻に浸れる良作だった。直向きになれる事に出会えるのは、幸せな事だと思う。
2020/07/09
青乃108号
短編集は苦手。人物やら背景やらを把握するまでに時間がかかり、やっと状況がつかめた頃にもう終わり。そのような事を5回も6回も繰り返してようやく一冊が終わる。けれどもこの本はどの短編も掴みが上手で容易に作品世界に入っていける。どの話も良いが中でも【山を刻む】が一番好み。家族の中でいつの間にか自分自身を失ってしまったお母さんが山に登る。どんどん登る。いくつになっても、どんな状況であっても夢を諦めない。最後のお母さんの言葉に胸が熱くなった。
2022/05/10
nanako
「八月の銀の雪」を読んで伊与原さんの作風に惹かれ、本作品を手に取りました。この作品も、何かしらの喪失感を抱えた人たちの話でしたが、素晴らしかったです。短編集で「山を刻む」が個人的には好みでしたが、どの作品も静かに、心に響いてくるような、大切な人との関係を、もう一度、改めて考えさせてくれるような素敵なお話でした。
2021/02/27
bunmei
『2019年静岡書店大賞』に輝いた、6編からなる短編集。初読みの作家ですが、東大大学院の理学系学科を修了しており、かなり専門的な天文学や地質学、物理学の知識を織り交ぜながらも、最終的には、情感溢れる人と人との繋がりを描いています。登場人物は、自殺志願者や偏屈な老人や学者、元ギタリスト等・・・。それぞれが悲哀に満ちた現実や過去を背負い、心の葛藤を繰り返す中で、これから進むべき道を模索しています。そんな中、人との出会いやある出来事よって、殺伐として諦めかけていた心の中に、温かな灯火が灯ってくる短編集です。
2020/01/07
ウッディ
「月が地球から少しずつ離れているって知ってますか?」人生に絶望した男性が乗ったタクシーの運転手は理科の元高校教師だった。天体、気象粒子、地層、火山、科学に携る人と出会い、彼らの情熱と圧倒的な自然の真理に触れ、生き辛さを感じている人たちは一歩を踏み出す勇気をもらう。同じ時間に来店し、同じ規則性でメニューを注文する女性と母親を失った親子の触れ合いを描いた「エイリアンの食堂」が良かった。彼女がおすすめの日替り定食を注文しない理由にニヤリとし、「月まで三キロ」の行先標識を探しに行きたいと思った。面白かったです。
2022/06/29
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