数学する身体
数学する身体 / 感想・レビュー
鉄之助
「超文系」の私が、数学って面白いかも、と初めて感じた1冊だった。数学を表す英語mathematicsが、ギリシア語マテーマタから来ていて、その意味は「学ばれるべきもの」。我が身体の中に眠っている「数学的こころ」に耳を傾けてみるのも一興か。漢字の一二三の次の四が、なぜ横棒四本じゃないのか、の答えが明解なのも面白かった。それは人間の黙っていても認知できる限界が三までだから。四からは別モノ。楔形数字も古代インド数字も、そしてローマ数字も、すべて3と4の間に深い溝があった。体で感じる「数」なのだ。
2023/09/20
どんぐり
第15回 (2016年)小林秀雄賞受賞作。道具としての数字が次第に自分の一部になっていく「数学する身体」についてのエッセイ。「イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密」で映画にもなったアラン・チューリング、そして日本の岡潔へのリスペクトに溢れている。著者のいう「脳は数量の知覚を、サイズや位置や時間などの、数とは直接関係のない他の『具体的な』感覚と結びつけてしまう」という言葉に、毎日毎日発表される「コロナ感染者の数」のことを思いながら読んだ。
2021/04/27
hnzwd
数とは何か。数学とは何か。数学と計算の違いとは。数学の歴史と、二人の巨匠であるチューリングと岡潔を掘り下げながら"数学"というものに迫る一冊。計算式は全く出ず、、文学的表現が激しいために数学本とも言い切れず。文章には力があるし、不思議な魅力に溢れてます。人口知能的な性質を持たせたハードウェアを作ったら、どこにも繋がっていない、でも必須な回路ができた、って話は興味深い。
2016/01/06
SOHSA
《kindle》数学自体と数学することの意味についての考察。「数学する身体」と「計算する機械」の対比は刺激的で興味深い。チューリングと岡潔の思想を取り上げ、両者の全く異なるベクトルで数学の真髄に迫ろうと試みている。哲学論争に陥ることを避けながらと言いつつ、著者の言説はかなり哲学的でもある。いずれにせよ数学に対する見方、数学することに対する見方が読後大きく変わったような気がする。それは何か今までの観念を覆されたというよりもぼんやりとした映像がより明瞭にはっきりとしたという印象か。やはり数学は興味深い。
2019/12/09
hippos
数学の成り立ち、古代ギリシャからチューリングまで。そして行き着いた先にある「情緒」。自己を取り巻く全ての環境と融合し、環境と一体化すること。 これまで理解できなかった岡潔の世界が少しだけ近づいた気がする。今年(まだ2月だけど)読んだ本のなかで一番良かった。
2017/02/18
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