図書室
図書室 / 感想・レビュー
旅するランナー
雑誌ダ・ヴィンチのプラチナ本 OF THE YEAR 2019。公民館の図書室で友達になった小学生男女が地球の滅亡話で勝手に盛り上がる微笑ましい表題作と他1編。大阪の文化・特質・風土、猫への溺愛ぶり、読書により形成されるもの...学術的分析と憧憬が合わさって、そこはかとないセンチメンタリズムが漂います。きっと読者は、子供の頃や学生の時の思い出の場所を訪ねたくなるでしょう。そして、年配の大阪人は懐しさに絡め取られることでしょう。大阪やな。うん、大阪や。
2020/02/09
寂しがり屋の狼さん
表題が気になり手に取った本📚️学校ではなく、公民館の図書室で出会った男の子との思い出👦👧長い人生の中では、ほんの一瞬の些細な出来事…ふと、何気に思い出して懐かしく切なく感じる思い出🐾そこには確かに自分の足跡が残されてる🐺
2019/12/28
ケンイチミズバ
幼い頃妄想した人類滅亡は起こらなかった想い出。生まれた時から父親はおらず15歳で母を失った時も淡白でいた。最悪は起こらなかったということがここにはある。それは何というささやかな幸せなことだったことか。家庭の事情で友達とかかわるよりひっそり公民館で読書に夢中になる二人の出会。星の図鑑で太陽の寿命を知り、人類滅亡ごっこをしたあの小屋がまだあった。何となく付き合い別れた男も優しさしかった。今、40歳で独りに。待ち望んでいた捨て猫を見つけ、またささやかな幸せに喜びを感じる。公団の窓から外を眺めるシーンが好きだな。
2019/09/17
モルク
表題作は10年暮らしたパートナーと別れ一人暮らしをする美穂。思い出すのは中学の時に亡くなった大好きな母と猫たちとの生活。おでんかカレーという食事と、ひとつの布団で皆と寝ていたこと、猫のお腹に顔を埋めたときの恍惚感。そして小学生の時に公民館の図書館で出会った少年。世界の終わりを語り合い、二人だけで生き残った時を考え缶詰めを買い河川敷の小屋での小さな冒険。懐かしさがこみ上げる。子供の頃の図書館の心地よさが、岸さんの文章と共に甦る。決して派手ではないが、心にしみてくる作品。
2020/09/16
nico🐬波待ち中
独り暮らしの50歳の美穂は日々を平穏に暮らしている。そんな美穂がふと思い出すのは11歳の頃の事。公民館の小さな図書室で出逢った少年との淡い記憶は、今となっては曖昧なもの。けれど今もはっきり思い出すのは二人が共に体感した"地球の終わり"。二人きりで真剣に語り、不安になり泣いたあの夜の事は、心の奥で今なお生きている。あの一瞬の激情があるから今がある。今振り返ると、ほんまあほみたいやけど、あの時二人で相談して決めた娘の名前は、40年経った今でも忘れない。美穂の終始淡々とした語り口が、余計に切なく心に刺さった。
2020/02/09
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