ぎょらん
ぎょらん / 感想・レビュー
鉄之助
冒頭の3行で、気持ちを一気に持っていかれてしまった。私にとっては、川端康成『雪国』級のインパクトだった。ぜい肉をそぎ落としに落としたようで、無駄なセンテンス無し。いずれも、死にまつわる味のある話が続く。「ひとが死ぬ夜は、空気が少しだけ苦い」(「冬越しのさくら」の冒頭)。作家デビューから、これが2作目、という著者の底力を感じさせる。
2024/02/25
さてさて
『あんなに鮮明に知ってしまうと、それを無視なんてできない。俺は、あいつのぎょらんが見せたものに今も、悩んでいる』という今を生きる朱鷺。六つの短編を読み進めれば進めるほどに、その内容がどんどん重くなっていくことに恐怖を感じさえするこの作品。そして、人の『死』とそんな人の『最期の言葉』が詰まった『ぎょらん』に対する怖いもの見たさの感情が、読者の心を激しく揺さぶり続ける圧巻のストーリー展開を見せるこの作品。町田さんが描く、鬼気迫りくる圧巻のストーリー展開に、すっかり心を持っていかれた傑作中の傑作だと思いました。
2021/10/25
ミカママ
「死者と遺された人々」というそのテーマからすれば当然なのだが、狭い世界の中で人が死にすぎる。それらが繋がりすぎる。良くも悪くも、作り込まれすぎている。ひとつやふたつのエピソードならば「いいお話だったなぁ」で済むところだろうが、ラストあたりはガンガンページをめくり飛ばしてしまった。わたしの中では、恋愛度高めのデビュー作に軍配をあげておく。
2019/08/22
ウッディ
人が死ぬ時の想いを形にした「ぎょらん」。その美しい赤い玉は、遺された者に強いメッセージを伝える。親友のぎょらんを口にし、自分への恨みを知った朱鷺は、ニートになってしまう。ぎょらんをめぐる物語を描いた連作短編集。読メで知ったこの小説、評判通りの面白さでした。遺された人達は、愛する人の最期の想いを知ることができないからこそ、苦しんだり後悔したりする。ただ、死者の最期の願いを叶えられた時だけ、再び繋がることができる。じんわり心に染み込むような物語でした。
2019/04/14
青乃108号
短編集なんだな、1話が「ぎょらん」で他は別な話なんだな、と目次を見てから読み始めた。そしたら。なんと連作短編集ではないか。最初から最後まで死者が遺すと言われる赤い球「ぎょらん」の話。一気読み出来る程には読みやすかったが、しまいには「ぎょらん」で腹一杯になってしまって。1話、2話あたりは「ええ話やないか」などと余裕で読んでいたのだが段々とドロドロした痴情、怨恨がらみの話になってきて、そもそも田舎の小さな町で殺人やら自殺やらいろいろ起こり過ぎだろー、しかも残された人同士が知り合いで、あー、みたいな。予定調和。
2024/02/25
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