この空を飛べたら
この空を飛べたら / 感想・レビュー
やすらぎ
悲しみに耐える7つの短編が重なり合う。目の前を過ぎゆく人。僕はここでずっと何かを待っていた。溢れても行き場のない摩れる感情とともに。ポケットの白鳥の声が微かに聴こえる。ビルの屋上のドアが開く。遠雷がネオンに染まる。不自然な青に照らされて容赦なく。地上には雷よりもずっと恐いものが沢山ある。降り落ちてゆく雨、何かを洗い流すかのように激しさを増す。濡れてしまったらもう元には戻らない。でも私はまだここにいる。もしこんな空でも鳥のように飛べたら、朝陽も夕陽も当たらない何も感じられなくなった心にも光は届くのだろうか。
2022/06/11
Take@磨穿鉄靴
まず大前提として私は高校生の時になみふく(中島みゆきファンクラブ)に属していて青春時代を中島みゆきと共に過ごしている。オールナイトニッポンは聞いて無かったけど「中島みゆきのお時間拝借」は毎週楽しみにしていた。そしてこのタイトル「この空を飛べたら」は私の中島みゆきベスト5に入るであろうナンバー。で読む。時代(1990年に発行)が流れているのを加味しても若者コトバが多用されていてシンプルに読みづらい。構成としてはシンプルな短編集かと思ったけど各話がリンクしてたりする。ボリュームは少なめですぐ読了。 続く
2022/06/15
とよぽん
再読して、さらに中島みゆきさんの多才を実感した。小説というより脚本のような、語りの多い作品だった。そして、短編同士が連環を成すという終盤が見事。
2019/04/27
稲森
短編集で内容も全部リンクしていてどの話にも雨が降っていてほとんどの話に鳥が関係している。初めて中島みゆきの小説を読んだが、独特で尚且つ読みやすい文体で、中島みゆきの歌にも滲み出るような雰囲気を持っていて他のものも読んでみたくなった。最初は読んでいて少し暗い気持ちになったけれど表題作の「この空を飛べたら」を読んだことで、何も変わってはいないし底抜けに内容が明るくなるわけでもないのに何故か救われたような気がする、不思議な内容でした。
2012/04/28
つくし
中島みゆきさんは数曲知っている、そして何曲も耳にしたことがある。言葉に重みがある、しかも上っ面じゃない、という印象があったけれど、小説になってもなおその芯の強さを感じました。どうしたって生きているし、生きたい。人生の泥臭いところ、そこまで書くかというような展開の中に、このオムニバスを通して「生きろ」と言われている気がした。どのように、という部分はきっと人にきくのではなく自分で探すのでしょう。
2017/08/20
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