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蟻の棲み家

蟻の棲み家

蟻の棲み家

作家
望月諒子
出版社
新潮社
発売日
2018-12-21
ISBN
9784103521914
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蟻の棲み家 / 感想・レビュー

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いつでも母さん

なんとも苦しい読書だった。これは多分この国で起こってる事の一つだろう。どんなに綺麗ごとを並べても『見て見ぬふりする社会』の一員は私でもある。翼と末男が逮捕されてから真実はどこ?に至るまでじりじりして、とにかく哀しかった。『運』なんて言葉で語りたくはない。狭い路地を走って屋根と屋根の間に見える青空は誰の目にも同じ空なのに・・末男よ、今、見える空は青いか?広いか?殺していい人間などいないけれど、殺されても悲しまれない人間もいるのだなぁ。なんとも遣る瀬無いがお薦めです。

2019/01/24

hiace9000

社会から置き去りにされ、闇から這い上がることのできない蟻地獄の如き現代の貧困をテーマに、被害者・加害者、マスコミそして世間の常識の矛盾、欺瞞を炙りだし抉りだす社会派ミステリー。ノワール群像劇のなかでも最右翼の「闇」度合の本作。骨太で迫真の圧倒的筆力は、ボディブローのように読み手を苛み続ける。闇から作者が放つ言霊は鋭利な漆黒の矢尻となり、格差や貧困の現実を見て見ぬふりする我々の胸を容赦なく突き刺し貫く。「貧しいのと貧困は違う」のくだりには頓悟の感すら。そして待ち構える衝撃のラスト。読み応えズシリの傑作小説。

2023/04/19

モルク

身代金目的の偽装誘拐、食品工場を恐喝する電話、そして売春婦二人が至近距離から射殺される。事件の繋がりは…。逮捕された男たちの言い分の違い、どちらが主犯で、どちらが本当のことを言っているのか。片や開業医の息子、そしてもう片方はネグレクトを受けながらも妹を育て、膨らんだ母親の多額の借金を背負ってきた男、末男。重く、苦しい!子供は親を選べない、だからといって…これは酷い。もがけばもがくほどぬかるみから抜け出せない。この社会の闇は何なんだ。

2021/02/05

のぶ

とても重厚なクライムノベルを堪能した。二人の女が中野区内の別の場所で、銃で撃たれ死亡しているのが発見された。二人とも売春で生計を立て、育児を放棄したシングルマザーだった。一方で蒲田の工場で起きた地味なクレーム事件が起き、それを追う記者がいた。物語が進むにつれ、これらの事件や関係する登場人物の関連が明らかになってくるのだが、社会の底辺で生きている人たちの描写が、読んでいて重くのしかかってくる。望月さんの本は初めて読んだが、骨太なプロットと人物造詣が読み手の心を掴んで離さない秀逸な作品だった。

2019/02/10

fwhd8325

重苦しい作品でした。世界がどんどん狭まっているように感じる。一方で、個人を晒されてしまう時代。まさしく、今を描いている物語でした。小説の世界でもこうした内容が増えてきたように感じますが、私自身が、小説として割り切っているだけでなく、何だか麻痺しているようにも感じる怖さを感じます。

2019/06/30

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