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涙をなくした君に

涙をなくした君に

涙をなくした君に

作家
藤野恵美
出版社
新潮社
発売日
2019-12-18
ISBN
9784103530510
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涙をなくした君に / 感想・レビュー

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sayuri

終始、どんよりとした空気が漂う作品。主人公は両親の愛情を享受出来なかった記憶に縛られ自らカウンセラーとして働く宮沢橙子。テニスインストラクターの夫・律と結婚し、小学一年生の一人息子・蓮と3人で暮らしている。穏やかな生活を送りながらも過去の記憶に囚われ足掻く橙子。外面だけ良く、家庭内で妻や娘にDVを繰り返す橙子の父親には軽蔑と嫌悪しかない。母親や妹に身勝手さを感じるも実際経験した人でしか解らない感情があるだろうし父親を見限る態度を否定出来ない。血が繋がっているからこそ許せない親子関係もある。血縁の闇は深い。

2020/01/26

ウッディ

優しい夫と可愛い子供がいて、カウンセラーとして充実した仕事をする橙子は、自分の思い通りに家族を支配しようとした父に対するわだかまりが消えない。過去の仕打ちに反発し、父と会おうともしない母や妹に対し、父を恨みながらも孝行娘を演じようとする自分に嫌悪する橙子。クライアントの心の問題を冷静を解きほぐすプロでも、自分の心はどうしようもできないのかと思った。宿題をしなかったことに激怒した父に、飼っていたハムスターを床に投げつけて殺されたという経験はなかなか衝撃的なエピソードで、ドヨーンとした読後感でした。

2020/05/27

ゆみねこ

読了後、重たい気持ちに。暴力的な父に支配された過去を持つカウンセラーのヒロイン。実家とは距離を置きながらも完全には断ち切れない気持ち。やがて父の肺がんが見つかり…。父親よりも実母や妹に拒否感を覚えた。

2020/12/23

itica

父親の支配下で育ち、やがて家庭崩壊に至った経験を持つ橙子は、夫や息子に怒りをぶつけそうになり、そのたび父親に自分を重ねてしまう。父親を嫌いながらも見捨てることができない自分にも苛立つ。橙子が臨床心理士と言う職業を選んだのは、いびつな自分の心を理性で受け止めるためなのだろうか。何とも息苦しい。そして母親や妹の身勝手さに腹が立った。最後に明るい兆しが見え、初めて安堵のため息が出た。

2020/01/05

misa*

両親の愛を享受できなかった記憶に抗い続けるカウンセラーの橙子。テニスインストラクターの夫と小学一年生の息子と、一見平穏な生活を送っているが、両親から愛された記憶のない橙子に家族を作ることなどできないのか。幼少期に蓄積された負の記憶は、連鎖してしまうのか。決して大きな事柄が起こるわけでもない物語なのに、どこかリアルに感じられて、苛立ちも寂しさも一緒に味わってしまう。ただ平和に幸せを感じながら日々を過ごせるということが、どれほどまでに心を豊かにしてくれるのかが、とても感じられた。

2020/03/03

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