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首里の馬

首里の馬

首里の馬

作家
高山羽根子
出版社
新潮社
発売日
2020-07-27
ISBN
9784103533818
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首里の馬 / 感想・レビュー

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ヴェネツィア

主人公の未名子は、「内向的」という言葉がそのまま当てはまるような女性。沖縄及島嶼資料館でのヴォランティア(?)を長年にわたって続けているが、ではそれに情熱を傾けているのか、といえばそうでもない。「情熱」という言葉が当たらないのだ。彼女の仕事もまた実に奇妙だ。世界のどこかの誰ともわからない人たちにクイズを出すというのがそれなのだが、彼女はさほど違和感を持っているわけでもない。ただ、相手の人たちは極めて孤独な状況にあり、どこかで彼女と通底するようだ。また、迷い込んできた馬と彼女はいつしか⇒

2020/08/29

鉄之助

タイトルから、沖縄の遊女・ジュリ馬行列の祭りに関係する話か、と思ったらまるで違っていた。古代から琉球王朝、そして、大平洋戦争から現代にいたる沖縄の歴史が織り込まれた壮大な物語だった。時にはSFファンタジーの色合いもあり、興味津々。台風も、戦争も首里城の炎上も…、沖縄の人たちを突然襲う災厄。そのなかで、生き続ける人たち。沖縄県の天然記念物・宮古馬が突然現れたのには驚いたが、そのポニー位の大きさの馬に乗って、かすかに笑いながら街を歩く主人公・未名子の最後のシーンに、余韻が残った。 →

2024/04/18

こーた

記憶はひとに語ることで物語となり、また保存されることで記録となる。カメラ、音声、メモ、SDカード。記録することに意味などないのかもしれない。けれどそれら記録をべつの誰かがべつの時べつの場所で開けば、そこに何らかを価値を見出せるかもしれない。記憶の断片を繋ぐ。連想。クイズ。遠く離れた異国の回答者が語るかれらの物語は、いまこの国で起きていることのようにも、また過去にあった出来事とも、あるいは来たるべき未来を予感させるようにも読める。記録されているから読むことができる。かれらの記憶をめぐる物語は小説となって。

2020/09/26

ehirano1

「孤独」がテーマのような感じがしました。未名子は確かに孤独ではありますが、同時に孤高でもあるように思いました。得てしてそういった人は他人には理解され難く、気味悪がられてしまう。しかしそれは、孤独と孤高を有するが故の産物であり仕方がいことではないかと思いました。生き方を突き詰めて行けば「孤独」は必ず行き着くか立ち寄ることになるので、他者から理解され難くあるのは寧ろ必然のような気がしました。

2024/02/10

いっち

主人公は「孤独な従事者」にオンラインでクイズを出す仕事をしている。仕事最後の日、主人公は個人的なクイズを出題する。クイズは、『にくじゃが』『まよう』『からし』。作中に答えは書かれていないが、ヒントはある。答えがわかったとき(答えはコメントの「詳しい感想はこちら。」のリンク先に書いています)、主人公はなぜその問題を出したのか、気になった。登場人物はみな孤独な場所にいる。だが孤独だからといって、さびしい様子は見えない。川上弘美さんの選評に「静かな絶望と、その絶望に浸るまいという意志」とあり、なるほどと思った。

2020/12/20

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