めくらやなぎと眠る女
めくらやなぎと眠る女 / 感想・レビュー
藤月はな(灯れ松明の火)
村上春樹の短編小説、挑戦の一つ。「鏡」が一番、怖かった。自分が嫌いだがその事実から逃れられない人にとってこれ程まで、怖い物語はないだろう。「人喰い猫」も『納屋を灼く』を思い出す怖さがある。一方で「貧乏なおばさん」はおばさんより、語り手が見た女の子の理不尽の方が心に残る。あの子が幸せになるような世界が貧乏なおばさんがそのままでいられる世界なのかもしれない。「かいつぶり」はカフカの『城』とアリ・アスター監督の短編映画、Beauが合わさったような不思議な作品。個人的に「バースデイ・ガール」がお気に入り。
2019/05/21
アキ
外国読者向けの24の自選第2短編集。短編を書くのは「喜び」と著者。彼女との出会い、喪失、死、擬人化された動物、哀愁を感じさせ、途方に暮れる終わり方、心に染み入るもの、どれも好み。物語の展開が秀逸な「蛍」、映画化された「ハナレイ・ベイ」、バンド・デ・シネになった「どこであれそれが見つかりそうな場所で」と「バースデイ・ガール」、8頁だけの「スパゲッティ―の年に」、偶然ディケンズの荒涼館を読んでいた2人の話し「偶然の旅人」、日本の文壇の印象「とんがり焼の盛衰」など、久しぶりにムラカミワールドに浸り、幸せな時間。
2020/03/05
キムチ
読み返しだが中身は記憶に残っていない自分に笑える。映像が浮かぶ文章スタイルは好み故に秀逸(7番目の男の顔が波がしらに浮かぶ/夫人亡きあとたむろする猫が夫人を食べつくす/貧乏な叔母さんがやたら話しかけたがる表情/トニー滝谷の得も言えぬ泣き笑いの顔/とんがり焼きを評価して一斉に泣きわめく烏の大群/氷男のダークな内省を思わせる目、表情、霜のついた手/吐きつくした蟹の吐しゃ物に浮き上がるぶつぶつしたモノ等)これを読むと「象の消滅」もセットで読みたくなる。意味が解らぬ極めつけの不条理、シュールなホラーがまさにハルキ
2023/09/01
優希
人を飲み込むような雰囲気のある粒ぞろいの短編集でした。孤独という波が押し寄せ、瞬時に全ての感情を失うような感覚にすら陥ります。短編作家としての村上春樹は人の感情を殺し、心の奥底に何かの襞をのこしていくような、そんな感じがします。この作品の愉しみはジャンルのない文学に浸るということなのでしょう。一歩間違えると戻ってこれないような口を開けた世界が広がっていました。
2014/09/15
たつや
この本を手に取り、あらためて、村上春樹は世界的な作家だったんだなと、痛感する。なんとなく、海外の作家、の本を読んでるような、気品や余裕をそこはかとなく感じた。少しずつ読んでも楽しめた短編集でした。村上春樹というジャンル。
2016/12/03
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