騎士団長殺し :第2部 遷ろうメタファー編
騎士団長殺し :第2部 遷ろうメタファー編 / 感想・レビュー
ヴェネツィア
村上春樹はこれまでもそうした傾向はあったが、本作では一層に物語化への傾斜を見せている。その最たるものが騎士団長の造形だろうが、それは51「今が時だ」で頂点に達する。この章段では、まさに魔術的な跳躍がなされるが、それはある種の村上流マジック・リアリズムの駆使である。ただし、村上春樹自身は本書の中でもしきりに「メタファー」という語を多用しているのであるが。ただ、それ以降物語は収束に向かい、開かれた環は閉じてしまう。最期は予定調和的なものに終わり、しかもそれらが新たな「私」の個の円環から排除されるのは残念だ。
2017/02/28
starbro
第1部・第2部、1,000P強一気読みです。村上春樹文学の集大成、物語の全て(ミステリ、恋愛、ファンタジー、歴史、宗教、性等)が濃密に詰まっています。村上春樹版【『グレート・ギャッビー』&『不思議の国のアリス』】として読みました。今年こそノーベル文学書受賞を期待していますが、あらないでしょうか?本作で登場した絵画を実際に観てみたいので、『騎士団長殺し』の画集を企画・出版していただけないでしょうか?新潮社さんお願いします。
2017/04/05
遥かなる想い
第2部に入り、一気に 登場人物のすべてに 息吹が吹き込まれ、生き生きと物語は動き出す。 村上春樹が描く絵画的な風景は 読んでいて 本当に心地良い。 時折 何の前触れもなく 紛れ込む 雨田兄弟の戦時の追憶は苦く、 美少女 秋川まりえの言葉の切れ味は鋭く、 現実と夢の世界の冒険は まさに村上春樹 の世界.. 最後はひどく心 暖まるエンディングで 楽しい読書の時間だった。
2017/06/02
zero1
今見ている世界は本物?自分では何も選べない?免色の依頼でまりえの肖像画を描くことになった主人公。行方不明になるまりえ。不思議世界が展開する。南京事件にも言及。メタファーは「海辺のカフカ」そのまま。まりえの鋭さは「ダンス」につながる。イデアの騎士団長、「ねじまき鳥」のような穴と鈴、ペンギン、「フォレスターの男」など謎は残されたまま。しかしすべての謎が解けたらそれは小説でなく説明。下巻だけで500ページ超と長い。それでも読めてしまう。ウダウダ同じ所を巡っている感じも村上世界。彼の死後、AIで作品が書ける?
2019/06/19
抹茶モナカ
高等遊民のような優雅なアトリエでの日常と両義的な存在の免色さん、騎士団長と、少し静かな印象のあった第1部から、やはり、冥界巡りになって、そこからは一気読みでした。村上春樹さんが若かったら、高官暗殺未遂事件と南京大虐殺の話も深く描写していたのかなぁ、と。1人称でコンパクトに、静かなタッチで、それでも、ムラカミ・ワールドを描いたのは、筆力の向上もあるのだろう。ただ、何処か、読者を置き去りにして、カオスを残して環を閉じない作風が、ちょっと懐かしくて、それはそれで厭なんだけど、こう纏まっていると寂しくもある。
2017/03/12
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