令和元年のテロリズム
令和元年のテロリズム / 感想・レビュー
鉄之助
表紙や本文中に、数多く掲載されている、山谷佑介カメラマンの写真が、強烈なインパクトを放っていて読んでみた。令和元年(2019)に立て続けに起こった社会を震撼させる3つの殺傷事件。 特に第3の京都アニメーション放火事件(7/18)では69人もの人たちが殺傷され、今も記憶に生々しい。これらを「テロリズム」と呼んでよいのか、最後まで分からなかった。引きこもりや、介護、学歴格差などがその背景にあり、一層忘れてはならない事件であることには、違いない。「悪意は伝染していく」怖ろしいことだ。
2022/04/25
パトラッシュ
大義や信念に基づく犯罪がテロルなら、取り上げられた事件は外見的にはテロではない。しかし岩崎隆一も熊澤英一郎も青葉真司も、未来が見えない引きこもりとして過ごした平成への怒りを溜め込んでいたのだとすれば別の側面が見える。令和という新時代への希望を求める世間に、自分は完全に日本に見捨てられたのだという絶望にとらわれたのか。まず保護者が老いた岩崎が暴走し、彼と同じことをするのではと父に思われた熊澤が殺され、親にも見捨てられた青葉が放火した。飯塚幸三へのバッシングも、彼らだけでない平成への鬱屈が令和に爆発したのか。
2021/05/11
ma-bo
川崎殺傷事件(カリタス小学校通り魔事件)、元農水省事務次官長男殺害事件、京都アニメーション放火事件。時代が平成から令和に変わるタイミングで起きた事件をたどる。加害者(農水省事務次官の長男は一応被害者にはなるのだが)が同世代の40~50代で、現実社会に馴染めず犯行を起こしたのはやるせない。
2021/06/15
hatayan
2019年に起きた川崎市のホームレス襲撃事件、京アニ放火事件、農水省の元事務次官が息子を殺害した事件を、就職氷河期前後の世代が起こした同時代性のある事件としてルポ。農水省の元次官の事件では2章を割き、被害者のTwitterの過去ログを解読。親の権威を笠に着て引きこもり両親に暴力を振るっていた被害者の素行を詳らかにしながら、「どうしようもなさ」を切り捨てるのではなく向き合う姿勢が求められていると問題提起。1970年代の「青い芝の会」運動に重ねながら、彼らが社会に訴えたかったものが何かを考えようとします。
2021/04/27
gtn
川崎殺傷事件、元農水省事務次官長男殺害事件、京アニ放火殺傷事件の三事件を、著者は「令和」という時代で括ろうと目論むが、各事件の背景が個別に過ぎ、括り切れない。敢えて共通項を見いだすとすれば、親が子の人格を認めぬが故に、過干渉又は無関心であること。その結果、子が孤立していること。だが、それは、時代を超え、普遍的な理由。
2022/06/02
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