みだら英泉
みだら英泉 / 感想・レビュー
えも
みだら絵に己の人生を捧げた江戸時代の絵師、英泉。妹の縊死を機に大成していくさまは地獄変のようです。妖しく熱のこもった描写がいかにも皆川さんで、堪能しました。
2015/10/12
三平
「己れ及ばずとて自から棄てんとする時は、即これ其の道の上達する時なり」 かつて女絵師応為が語り、その父北斎がうなずいた言葉。この言葉は本作の内容そのもの。これは己の未熟さに打ちのめされた浮世絵師渓斎英泉が迷い苦しみながら這い上がっていく生き様を描いている。杉浦日向子『百日紅』に出てくるお気楽な英泉と違い、絵師としての道を模索し苦しむ様を妹たち、長二郎(為永春水)、お栄(応為)との関係性から浮かび上がらせている。人と違うことをやることの孤独さを思い知らされた。結構ヘヴィな物語だった。
2015/04/28
菊蔵
再読。約20年程前に読んだのだが結構忘れていて驚く。変化朝顔の印象がすごく強くて、この題名を読むと色鮮やかで獅子のような朝顔が脳裏に浮かんだものだった。皆川先生の最近の作品は西洋ものが多いけれど私は出会いが「写楽」だからかこの作品もすごく好き。浮世絵自体好きということもあるけれど、この匂い立つ人の情念やある意味妄執のような歪んだ想いをこんなに綺麗な日本語で、こんなに艶っぽく時には婀娜っぽく描かれた日にはもうくらくらっと軽い眩暈が。読後は胸が苦しくなる切なさと静かな酩酊感に心地よく包まれました。
2013/03/23
真理そら
人前で読むのにはカバーが必要。皆川さんは有名な作家なのに初めて読んだ。北斎の娘お栄も登場するけれどこの作品の中ではおきゃんな江戸娘っぽい感じに書かれていてお栄さんは喜ぶだろうという気がした。一方英泉は才能と自負と生活とで押しつぶされそうになりながら懸命に生きていてあまりかっこよくない。芸術家を主役にした作品では創作の葛藤やらあれこれを書き込むせいか主役が一番かっこ悪くなってしまうのが面白い。
2017/08/30
冬薔薇
文化文政の町人文化、読本・浮世絵がもてはやされた時代、北斎を師と仰ぎ歌川派が人気の中で己の画風を模索する菊川英泉。当時人気の園芸・朝顔の変化種は数百あるという。「清楚な花々の中に狂い咲きの血をひそめ持った花が存在する」「清楚で爽やかな朝顔から妖美な狂い花が突如生まれる」朝顔に絡めた春画の世界に生きる絵師の物語。意外とあっさり読めた。
2014/12/03
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