天涯の船 下巻
天涯の船 下巻 / 感想・レビュー
よこたん
“行き行きて重ねて行き行く 君と生きながら別離す ~棄捐せらるるも復た道(い)うことなからん 努力して餐飯を加えよ” 遠い異国の地にあっても、心のよりどころは常にひとりだけ。地位も名声もかなぐり捨ててどこかへ行ってしまえたら…なんて、無理な話。余りにも数奇な人生を生き抜いた女性の物語だった。時代は流れ、登場人物達は退場しても、集めに集めた絵画(松方コレクション)は、戦禍をくぐり抜け今もなお残る。桜賀(=松方)幸次郎が、それはそれは魅力的に描かれていて、そりゃ気持ちに抗えないよねと思う。これは面白かった。
2020/08/11
taiko
第一次世界大戦の中、戦火渦巻く欧州のミサオ。やはりそこには、神のいたずらかカワウソ様との再会があった。…これだけ偶然が重なれば、意識していなかった2人でも意識するようになるだろうというもの。それが、お互いの気持ちを封印していた2人なら燃え上がるのは当然かなと。ドロドロの不倫劇のはずですが、ミサオの優雅さ、幸次郎の愚鈍な愛らしさで美しい恋愛劇に感じました。矩子の気持ちを思うとそうも言えないでしょうけどね。ミサオの数奇な人生を一緒に辿り、船のジュエリーを想像しながら本を閉じました。素敵なお話でした。
2019/06/13
ぶんこ
下巻にきて急速にワクワク感がなくなりました。上巻では、どんな苦難がおとずれても、必死になって前に進んでいくミサオさんが健気でした。下巻になると、不倫に溺れるミサオさんになってました。上巻の時から、妹の行方を調べなかったりと、積極的に自分から調べようとしない冷たさ?に、違和感を感じていました。 光次郎さんの苦境も、調べようと思えば、それほど難しくはなかったはず。愛してもらえない苦しさから、暴力や軟禁?にはしったマックス、後先考えない美術品の馬鹿げた殿様買いの後始末をした光次郎さんの奥様が可哀相。 消化不良。
2014/06/15
ほっそ
前半のほうが私としては好きですね。後半は、どうも昔の「メロドラマ」の感じがありました。 運命に翻弄されるというには、あまりに過酷な身代わりの少女ミサオ。彼女に仕えるばあやのお勝は、身代わりに仕立てるためにしつけという名の折檻。お嬢様かわいさのあまり、本当のお嬢様を「駆け落ち」させて、下働きの少女をいきなりの留学生に・・・ありえないんだけど、おもしろくて、ぐいぐい読んでしまいました。
2012/11/05
星落秋風五丈原
物語は 綾子が万里子と語る「現在」 綾子が思い出したミサオの昔話=「過去」 視点を完全に過去に移して、主に三人称で語られる「最過去」 の順に進行する。章の初めに必ず「現在」が登場し、 「過去」がミサオの播磨弁で語られる点で「最過去」と区切られる。ンティークが物語の発端となる所は、映画「タイタニック」と同じ。 けれど、明治、大正、昭和と3つの時代を生き抜き 日本、アメリカ大陸、そしてヨーロッパを駆け巡ったヒロインを描く 本書のスケールは映画を遥かに凌ぐ。果たして、ここまで男に思われるミサオとは、どんな人?
2003/06/10
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