双頭の船
双頭の船 / 感想・レビュー
けい
3.11の震災を起点とした物語なのですが、ファンタジー的な夢物語を読みながら、その中で現実を見せられている不思議な感覚に陥ります。一見突飛な筆者の発想を押しつけられいる様な、読み手側が自由に発想している様な?現実と空想の世界を行ったり来たりフワフワと読了させられしまいました。でも登場人物を通して筆者の考えは直接的に伝わってくるんです。ちょっと不思議な読後感です。
2013/07/21
優希
東日本大震災の現実を真摯に見ていたからこその作品だと思いました。被災地の再生を願いながら、心身を炒めた人々を受け入れていく災害地を想像すると、体に痛みが走ります。
2021/05/16
浅葱@
寓話だと思った。行き先や目的がコロコロ変わる面白さ、訳が分からない部分、朗らかで怪しげで可笑しさもあって。こちらとあちらの様々な定義を持つ双方向を行き来する船。「陸地との縁が切れないようにって言ってたよ。ちょうどいい距離にいられるようにって」千鶴さんは行動力(度胸)があって愛嬌があって可愛かった。本当は向こう側の人達や動物たちと一緒になり、別れるところは切なかった。ベアマンの言葉が切なかった。でも、死者も生者も居るべきところに帰ることに意味があり、現代はどんどん喪失していることへの警鐘を感じた。
2013/07/01
3月うさぎᕱ⑅ᕱ゛
3.11の出来事がファンタジーとして描かれることには抵抗があります。だけど複雑な心境でしたが、なぜか引き込まれていて心に響くものや考えさせられるものがありました。一緒に暮らしていた動物たちも人と同じように思いを残しており、その思いを慰め鎮魂していくヴェット。「人は土の力で生きている」「人間は供養する存在」というベアマンの言葉も心に残りました。
2015/12/17
いたろう
震災後の世界、何もなかったところ(船の上)に人が集い、街ができる。新しい希望の地。復興のダイナミズム。死者の姿を追うのをやめた時、人は前に進み始める。人が集まり、秩序が求められ、イデオロギーが、政治が生まれ、そして分裂する。これは、まさに現代における新たな創世記なのかもしれない。
2013/12/12
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