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葉桜の日

葉桜の日

葉桜の日

作家
鷺沢萠
出版社
新潮社
発売日
1990-11-01
ISBN
9784103780014
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葉桜の日 / 感想・レビュー

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ひめか*

捨て子で幼い頃から養子に引き取られて育ったジョージの話と、大学生の時母親を亡くし行き場を失っていたところ、おかまのママに拾われた健次の話。2作品を収録。しっとりとどこか切ない空気が流れる鷺沢さんらしい作品だった。「僕はホントは誰なんだろうね?」自分の心が空っぽになったような切ない言葉…結局は自分は自分でしかないし、救いの手は自分の中にしかないのかもしれないと考えさせられた。「みんな自分が誰かなんて判っちゃいねえよ」というおじいの言葉が胸に染みる。「うまくいくことなんて、なかなかないね、おじい…」

2014/09/24

masa@レビューお休み中

二つの物語の共通点は、本名で呼ばれることのない男が主人公であること。『葉桜の日』では、賢祐はみんなからジョージと呼ばれ、『果実の舟を川に流して』では、健次はケンケンと呼ばれる。これが、単なる愛称やニックネーム類であれば問題ないのだが、二人にはそれぞれ事情がある。自分の出生がわからなかったり、過去の記憶を手放して生きていたり…。それは、水の檻のように見えそうで見えない、抜けられそうで抜けられないものとうまく付き合おうとしているように見えてしまうのだ。息苦しくて、逃れることができない水の檻。

2012/06/10

きーしゃん

面白かった!けれど、やはり、陰にあたるのではないだろうか。どちらの作品も「やるせなさ」という現実をどう受け止めていくのか、受け入れていくのか、そしてどう世の中に向き合っていくのかということが書かれている気がする。ひいては、そういう自分でどう生きていく?と言った感じであろうか。葉桜は、誰もが一度は経験するであろう自己の崩壊を描いていた。そこからどう再構築するのかは読者に委ねられていると思う。果実の船は、容赦なく降りかかる現実に、自己を保ちながら受け入れ、流されるのは是か否かと葛藤する姿が描かれていると思う。

2019/09/13

ほうき星

作品としては初めての作家さんです。文体も読みやすく、内容も惹き付けられるものがありました。2編からなり、それぞれ男性が主人公。心の奥深くにそっと閉じ込めてある大切なものを取りだし、自分探しを始めます。作者がそうしたいことを作品にしたのかな?と感じました。さっぱりとした、しかし、優しい気持ちを持つ登場人物達。面白かったです。タイトル通り、桜の花も散り、葉桜となった今頃の季節が背景にあり、温度や風を感じることができました。他の作品も読んでみようかな。

2014/05/05

ひさしぶり

鷺沢さんの本よんでると マイナーもメジャーもアリ正解と思ってた頃に戻るなぁ。「果実の舟…」に (飢えそうな人間は、腹がはち切れて死ぬまで食うのだ)の一文がありますが 突っ走って壊れちゃえばハイおしまいで済むけど微妙に欠けたりヒビが入ってしまうと難儀なんだての暗示してると思えた。又他の作家に胸やけしたら鷺沢さんの本読むだろうなあ

2019/03/17

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