神器 上: 軍艦「橿原」殺人事件
神器 上: 軍艦「橿原」殺人事件 / 感想・レビュー
ぐうぐう
昭和20年、軽巡洋艦「橿原」で起こる連続不審死。探偵小説好きの上等水兵・石目が事件の真相を探る、といった展開からスタートする『神器 軍艦「橿原」殺人事件』だが、そこは奥泉光のこと、むろん事は単純には進まない。呪われた5番倉庫、艦底の幽霊、不可解な客人、鼠と蛇、ドッペルゲンガーとロンギヌスの聖槍、そして双子の天皇、と数々の謎がとめどなく読者を襲う。いや、そもそも、軍艦「橿原」に課せられた、その使命とはなんなのか。戸惑う読者をよそに、奥泉は物語を現代へと繋げようとする。(つづく)
2016/05/03
RIN
奥泉節炸裂作品、久々で歓喜!『グランドミステリー』『鳥類学者のファンタジア』みたく、眩暈がするような、立ち位置がわからなくなるような、時空の歪みに嵌り込んだような、そういうスタイルが結構気に入っている。昭和20年の軍艦内が舞台なのだが、軍人も兵士も実際はこんなだったんじゃないのかな~と、どこかホッとする。戦争で駆り出されただけで、それまでの仕事や暮らしぶりなどの日常がなかったかのような、美談仕立てや悲壮感使命感だらけの戦争小説に違和感を感じていたから。それにしても奥泉氏は読ませる文章が巧い!!
2011/12/06
amanon
軍艦というごく狭い世界を舞台に、かなり多くの登場人物を用いて、なおかつ複数の場面を並行して描きつつ、整合性を保たせる…つい『戦争と平和』を想起した。また、謎が謎を呼び、とりあえず前半では殆ど何も明らかになっていないというのもある意味すごい。そして、何より印象的だったのは、戦争…というより日本軍に横行した理不尽な仕組みや上下関係。どう考えたって、不合理で軍全体の士気を下げるようなことばかりが平然と行われるということに、「こりゃ戦争に負けるよな」と痛感してしまう。また、長い話をだれさせない軽妙な語り口が良い。
2024/06/10
藤枝梅安
なんだか、とにかく不思議な話。この軍艦自体が時空を超えたタイムマシンのような存在。この中でなら何が起こってもおかしくない。読者にそういう魔術をかけた上巻。下巻ではその魔術がいよいよ効力を増すのだろうか。
2009/04/27
ウィン
こんなにもジャンルの特定の難しい作品は今までに読んだことがない。そもそもこの作家の作品はどれも、これといってジャンルを特定することのできないものが多いのだが、今回もそのような作者の姿勢がはっきりと現れた作品になった。純文学かと思って読めば、ミステリもあるし、SFもある。内容に関しては、まだ上巻を読んだ時点では特に書くことはない。正直読んでいて分からないところも多いのだが、それでも決して読者を途中で投げ出す気にさせないのは、さすがの文章力。いまいち分からないながらも、少しずつ読み進めていきます。
2010/12/29
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