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いつも彼らはどこかに

いつも彼らはどこかに

いつも彼らはどこかに

作家
小川洋子
出版社
新潮社
発売日
2013-05-31
ISBN
9784104013074
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いつも彼らはどこかに / 感想・レビュー

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ヴェネツィア

2012年6月から毎月「新潮」に連載された8つの短篇。いずれも概ねはリアリズム小説だが、それぞれに微妙にズレてはいる。そして、そこに小川洋子さんらしさが発揮されている。篇中では「愛犬ベネディクト」を唯一の例外として、主人公はいずれももはや若くはない。そして、やはりいずれも社会の傍流にいて孤独だ。したがって、小説群を覆うのは寂寥感であり、ある種のやるせなさだ。ここにあるのは、けっして強い感動などではない。小説は、ひたすらに寂しく、黄昏の趣きに終始する。それは、いわば、しみじみとした他者性への共感なのである。

2014/10/25

ハイランド

心の何処かが欠損している人たちの静かな日常。その欠損を埋めようと、人はいろいろなものに心を託す。ビーバーの頭蓋だったり、ブロンズの犬だったり、イベント用の日めくりの看板の兎だったり。しかし似たようなピースでもぴったり当てはまらなければ、ジグソーパズルは完成しない。埋められない欠損を抱えた人たちの生は心に違和感を抱えながら続いていく。作者特有の静謐と哀愁と死の匂いとグロテスク。心の奥のいつもは目覚めていない感覚が呼び起こされるような気にさせられる。誰にも勧められるわけではないが、きっと必要な人がいる小説。

2016/07/10

風眠

スーパーのベテラン試食販売ガール、死んだ翻訳家の息子と小説家、オリンピック開催まで日めくりをめくる男、個人美術館の受付嬢と修理屋の男、ドールハウスという自分だけの世界で生きる妹を見守る兄と祖父、断食施療院に入院している中年女性と風車守の男、そして、身代わりで旅をする仕事をしている女性。彼らはみな静かで孤独の中に暮らしている。その孤独はとても美しいが、それゆえ哀しくもある。遠くにひっそりと誰かや動物の影を見ている。感動とはまた違う、震えるような感情が波立つ短篇集。手元に置いて何度でも読み返したい。

2013/09/16

やま

いつも彼らはどこかに 2013.05発行。字の大きさは…小。 帯同馬、ビーバーの小枝、ハモニカ兎、目隠しされた小鷺、愛犬ベネディクト、チーター準備中、断食蝸牛、竜の子幼稚園の8話。 動物を題材にした短編を「新潮」に連載したものを書籍化したものです。 翻訳家が、仕事をする時に、森の彼方此方に不思議な気配を残すビーバーが齧った小枝が、物語の登場人物としてチェスの駒のように組み立てられていることを原作者は、…知ることとなります。 物語の中に登場する動物達が、突然に現れることが有りビックリさせられます。

2020/11/04

みっちゃん

悲しみをそっと胸の中にしまい込み、控え目につつましく生きる人たち。手入れが行き届き、よく手になじんだ道具によって進められる彼らの仕事へのこだわりは、あるいは奇異に映るかもしれません。何か劇的な出来事が起こるわけではないのです。でも、敬虔さと慈しみに満ちた文章を読み進める程に、心はしん、と静まり、厳かな心地が広がっていきました。第三話の野球とおぼしき球技の、ひたすらまわりくどいルール説明にはおかしみがあり、クスっと笑いがこぼれました。

2013/09/09

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