ひらがな日本美術史 1
ひらがな日本美術史 1 / 感想・レビュー
アキ
芸術新潮で1993年に連載の日本美術史。埴輪から東大寺南大門まで21講。シロウトだからこそ専門家には指摘できない素朴で鋭い感性の考察が光る。法隆寺釈迦三尊像は聖徳太子の病気平癒を願う等身像だが、救世観音との違いは前者が釈迦を作ったのに対し後者は彼がモデルの自由な造形と指摘する。中宮寺菩薩半跏像をとてもモダンでこんな仏像は日本に一つしかないと言い切る。全身を黒い漆で覆われ、昔は肌色の肌を持ち朱色の布を腰に巻き金色に輝くアクセサリーに冠を頭に載せていたらしい。「成長前の少年」の精神性を飛鳥時代の仏像に見る。
2020/12/14
春ドーナツ
「ひらがな」と冠がついていると、親しみやすそうではありませんか。日本美術史に疎い私が手を出した理由。本書を紐解くと「ところで、何が「ひらがな」なんだ?」と思いますが、多分上記の理由で橋本さんは命名されたような気がします。橋本さんが解釈に用いられた、こねくりまわした文章をせっせと読み解くのが醍醐味です。美術と文化は密接に絡み合っているということを改めて肌で感じました。
2017/05/05
Bartleby
これは良い。「漢字」ではない「ひらがな」の美術史。たぶん正統や権威には依らないという意味合いだろう。ここでも橋本治の特殊能力、つまり当時の絵師や仏師に乗り移り、あたかもその時代を見てきたかのように語る能力をいかんなく発揮している。だからこっちも夢中で読んでしまう。どんなに博覧強記でもなかなかこんな風には書けない。詳しい研究者であればあるほど権威に遠慮してしまうということもあるのかも。絶版で、ちょっと手に入りにくいのが残念。なるべく手に入れて他の巻も読みたい。
2023/03/24
りー
「あ!そうか!」と思うことが何度もあった本。橋本さんが中学生の時に感じた日本美術への疑問や感動を、その時の気持ちのまま解説しているので、“ひらがな”日本美術史。特にそう言われてみれば・・・と思ったのは、鎌倉彫刻の運慶&快慶は何故古都奈良で生まれたかというと、焼かれたので新しくつくる必要があったから。誰に焼かれた?って、平家に。ですよねー、でも気づきませんでした。「いやなことを承知で言ってしまえば、美術史とは、金持ちの贅沢の跡を辿る行為である。」はい。その通りです。これだから橋本さんは面白い。
2019/05/05
小鈴
A4サイズの本を常に(渡部浩の日本政治思想史読書中は除く)携帯し、仕事の移動中に読み終えた。それだけの価値がある本。さー、七巻まで読みきるぞ!。ちゃんとした感想は後日。最近の読書傾向は日本再発見だな。渡部浩も橋本治も素晴らしい。充実の読書ライフ。但し、両方ともビジネス用の鞄には厚すぎたり、大きすぎるのが玉に傷(笑)
2010/04/05
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