望みは何と訊かれたら
望みは何と訊かれたら / 感想・レビュー
chimako
今の暮らしに何一つ不足はない。言ってみればやっと訪れた平安の日々。なのに、なのに……なのに私は何を欲しがっているのだろう。狂気と凶気のみの地下活動から命からがら逃れた先は、まるで飼育される動物のような毎日。ゆるやかな崩壊。食べる、寝る、交わう。追っ手の姿が見え隠れし始めたとき、再び逃げ出したのは生まれた場所。長い年月を経て、出会うはずの無い人と出会うはずの無い場所で出会ってしまった。幸せに暮らしているはずの自分なのに、なぜこんな事を繰り返すのか。彼は聞く。「望みは何?」と。恐ろしい質問。
2015/05/27
ぐうぐう
『恋』と同じように、あの時代を見つめ、問おうとする『望みは何と訊かれたら』。著者とほぼ同い年の主人公・沙織が、学生運動が高まっていた1970年代前半を回想する。沙織は、あるセクトのリーダー大場に惹かれる。大場のセクトが連赤を批判しながら連赤と同じ過ちを辿っていく前半は、あの時代を実際に生きた小池の苦い批判が込められている。しかし後半、物語は一転する。セクトを脱走した沙織は、他者との関わりを避ける秋津に匿われ、彼の部屋で過ごす。そこは、時代から隔離された空間。その反転の構図が、実に周到で効果的だ。(つづく)
2016/02/01
ときどきぷろぐらま。
ものすごい一気読み。幸せな生活を送ってる一人の女性の驚くような過去。それを受け止めている槇村はすごいと思う。 学生闘争、浅間山荘事件など、なんとなく知っている程度なのですが。 集団心理の恐ろしさ、カリスマ性を持つ人間のパワーには圧倒された。 秋津との不思議な生活は、彼女にとっての癒しになったのだろうか。 そして、この2人の間に生まれたのは、何だったのだろう。愛ではない気がする。
2013/10/10
K K
すごい!の一言。この読後感はそう味わえるものではないです。再読ですが、初めて読んだ時から、また色々恋をし、大人になったからか、読みがより深まった。凄絶な世界を描いているのに、汚くない。むしろ美しい。下敷きになっていると思われる愛の嵐も悲しくも美しかったですが、音楽のようでした。こういう世界って絶対あるんですよね。性癖とか、世俗的なことでなく、【性】を持つ我々人間は、極限状態に陥った時必然的に迎えるものなのかも。経験者でなくても、なんかわかる。オーバーサーティーの女ならわかる。男性の正直な意見も聞きたい。
2013/11/21
赤い肉球
読み終えてしまった。初めはなかなか進まなかったけど、読み出したら先が気になって、時間を忘れて読んだ。この時代を幼いながらも知っている私には、読み応えがあった。多分、同世代で学生運動というものに詳しいなら、たまらないだろうと思う。真理子さんの作品でもよく取り上げられる題材だけれど、これだけ重々しくも詳細に書かれたことは衝撃的。ただの恋愛小説ではなくてミステリーでもなく。でも私は夢中で読んだ。吾郎の立場からみた小説も読んでみたい。最後の方で再会した後に電話で会話する所では涙で文字がなかなか読めなかった。お互い
2013/07/14
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