一月物語
一月物語 / 感想・レビュー
がたやぴん
幻想的な雰囲気を充分に醸し出している作品。自身、文学作品を沢山読んでいるとは言い難いが、綺麗な文章だと感じます。ある面では恋愛小説、ある面では教訓を含んだ民話のようにも感じる。冒頭の奈良県十津川村の描写から引き込まれた。ラストを明確にしておらず読み手の取り方に委ねた形かも。約20年前の作品だが、古い文体を模しており先人の文学作品のようにも感じるが、それらに比べると構成は現代的で読みやすい。デビュー作であり芥川賞受賞作の日蝕は未読なので期待してしまう。
2016/01/24
えみ
妖艶で夢幻な世界。ふわりふわりと覚束ない旅路を主人公が往けば、いつの間にか夢と現の境界があいまいになっていく。否、元から現はあったのか?死出の旅…そんな不穏な言葉さえも浮かんできてしまうほど仄暗い旅路に遠くぼんやりとした光景を見た。覗いてはいけないという禁忌は妖艶な女の姿を隠す。拒む愛と求める愛、生死の境はあの世とこの世か。正直この世界観について行ける人を羨む。凡庸な私は曖昧でしかこの世界に触れられなかった。愛は死をも越える熱情を齎すのか、苦痛も愛の養分となるのか…彼らのその後は分からない。だから美しい。
2022/01/02
はまだ
まずですよ、文章がカレイで、ケンランです。擬古文、とよばれるやつです。神話のようなものでしょうか。古典の演劇を見たような、感覚。ドキドキするタタミカカケ。読み終えて、陶然とするような。「認識主体である人は、対象である自然と劇的に一致して、認識そのものが不可能となってしまう」「いかなる言葉も、自然の最も深遠な美に到達した瞬間にはことごとく無力となるであろうと信じている」とか、このあたりの、対象に対する認識は、主人公の我を忘れさせることと関係があるでしょう。よい。古典の演劇を見たことがありません。★4
2019/12/24
澤水月
これは素晴らしい。高野聖を想起させる幻想性、擬古文体、構成すべてうまく噛み合い陶然と酔わせてくれる。日蝕から須臾にして恐ろしいほど手腕を上げたと見受けられた 。読了は2010/12/6、赤星さん時代の読メからドワンゴ移管時に消えてたらしいのを再掲
2019/10/20
えも
なるほど、確かに泉鏡花の風情が強いです。ただ、この青い感じは「高野聖」より、初期の観念小説、例えば「外科室」なんかに似てるかな▼いずれにしても、平野さん堅苦しいと思ってた(かなり勝手なイメージ(^_^;))けど、結構読みやすそうかも。
2014/08/25
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