葬送 第1部
葬送 第1部 / 感想・レビュー
NAO
再読。フランス革命後の混乱も収束し落ち着きを取り戻したパリには、その落ち着きを待ち望んでいたかのように絢爛たる人々が群れ集ってきた。だが、再度革命が起こり、荒々しく動き続ける時代の中で、何かが終わりを告げようとしていた。そんな時代の転換期にあって、サンド夫人との確執に悩むショパンを描き、ドラクロアの芸術論が描かれる。真の芸術家ショパンやドラクロアの孤独と山師のようなクレザンジェのなんという違いだろう。
2019/10/14
あやの
単純に「ショパンの話」ではなかった。同時代を生きたドラクロワが一心に芸術への情熱を燃やしている一方で、病気だけでなくサンド夫人やその娘夫婦との関係に悩むショパンの晩年の姿や心中が語られる。それにしても、ショパンの「家族」達の卑俗なこと!繊細な装飾が施されたそれらの曲からは想像もつかないような、欲に満ちた人たちに囲まれていたショパン。逆に言えば、世俗的な中で生きていたからこそ、そこから逃れるように美しい音楽を創り出していたのかもしれない。
2020/03/24
すももんが
ショパンの音楽は大好きだが、今まで人物やその時代に思いを馳せたことがなかった。楽譜の中だけにしかいなかったショパンだが、「生身の人間」としての体温を肌で感じられるほどに、リアルで緻密に作り込まれた物語。永遠に会うことができない憧れの人が、まるで目の前にいるかのように感じられ、嬉しくて涙が出そうになる。同時代に活躍した多くの作曲家やピアニストたちも次々登場し、音楽好きには堪らない。この作品を読んでからマズルカへの見方が変わり、よく弾くようになった。自分の読書史上最も好きな作品。
2018/02/08
inaryoXD11
1840年代のフランス・パリを中心とした、画家ドラクロワとショパン、その関係者たちの物語。冒頭はショパンの葬式の日で、それをさかのぼって、彼らの行動や考え、周りで起こったことを、非常に多くの登場人物に語らせている。第一部ではドラクロワが下院図書館の天井絵画を完成させるまで。病気で創作ができなくなるのではと、ヒヤヒヤしながら読みました。それにしてもショパンが可哀想。どこまでが史実に基づいて書かれているのかわかりませんが、残っている作品や手紙などから、人物像とその人の考えを考察して書いているのだろう。すごい!
2023/05/28
kumako
サンド夫人がショパンの事を"子供"レベルに見下げている所(←夫婦ってこんな感じよね)、ショパンがサンド夫人の幸福を願いつつも押しが弱い所(←女はもうちょっと男にに強く導いて欲しいのよね)、ソランジュの母親に対する恨み(ずばり私の経験に当てはまり)、ドラクロワが長年を費やした大作を目の前にして達成感よりも損失感を感じる所(←定年退職したお父さんや空の巣症候群のお母さんってこんな心境?)など、その気持ち解る~っと思いつつ読みました。哲学書のような部分も多くて読みごたえはありましたが、私には少し難しかったです。
2018/12/07
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