決壊 上巻
決壊 上巻 / 感想・レビュー
ヴェネツィア
上・下で1000ページにも及ぶ長編。小説作法としては、特定の視点人物や語り手を持たず、いわば作者が鳥瞰的な位置から物語っていくスタイルを取る。ただし、そうした客観態ではありながら、読者の視点や感情は、その都度それぞれの人物に移入されてゆく。したがって、我々読者は兄弟の複雑な関係のあり方も、その双方から眺めることになる。あるいは、良介の妻の佳枝から崇への信頼と齟齬をも追体験するし、さらには母の和子の抱える行き詰まり感をも共有するのである。小説は、後半から俄かにサスペンスめいてきたが、果たして結末やいかに。
2015/05/01
遥かなる想い
エリート公務員崇と平凡なサラリーマンの弟良介、一方いじめに苦しむ中学生北崎友哉を平行して描きながら、ネット世界の怖さを描いている。上巻は良介が何者かにバラバラに殺されまで。平野啓一郎の作品、何か猥雑なものを描きながら、巧みに現代社会の病理のようなものを描いているような気がする。
2011/06/11
優希
物凄い圧力に押しつぶされそうになります。連続殺人事件に挑む問題作と言ってもいいでしょう。事件によって限界状態にあった自己の崩壊が息苦しさを感じさせます。事件に至るまでの時間は長いのですが、極限とも言える精神状態と行間にある重い空気に飲み込まれそうでした。不安で歪な世界観とどこまでが真実かが歪んでいる言葉。ジワジワと襲ってくる決壊の瞬間。全てが動き始めたところまでの物語。このまま下巻に行きます。
2016/07/29
ゆみねこ
ネット社会の闇を描いた作品なのか?感想は下巻で。すごく先が気になります!
2019/09/19
キムチ
「日輪」で辟易させられた文体、懲りたので敬遠していた。この作品のテーマが持つ極めて現実的な内容に気持ちが動いた・・けど、頭の悪い私には殆ど空虚に通り過ぎ、得るものがなかった。かつて読んだ三島作品に感じた「言語を弄するデカダン臭」を強く感じた。人間皆等しく、剥いたら「単なる肉体」内面に有する崇高な精神が如何様ににあろうとも・・。沢野家が陥っていく惨劇は人であることの悲しさ故もあってのプロセス。其処に高邁な語を散りばめれば散りばめるほどに滑稽さすら感じさせられた。崇が弄する性の数々すら、うんざりしてしまった。
2015/11/06
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