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透明な迷宮

透明な迷宮

透明な迷宮

作家
平野啓一郎
出版社
新潮社
発売日
2014-06-30
ISBN
9784104260096
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透明な迷宮 / 感想・レビュー

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風眠

満たされることの無い、深くて大きな空白を抱えている人、人、人・・・。他人と同じ筆跡の文字が書ける郵便配達人が差し替えた、大量の郵便物。ずっと探し続けていた人物は、実は自分自身のことだったと知る男。海外出張中に奇妙な性的体験をし、帰国後、その相手と再会する男がはまり込んだ迷宮。祖父の遺品にあったピストルの処理に翻弄される姉妹。火にしか性欲がわかない男。愛する女を失い、奇病にかかった男。みんな何かを満たしたくてさまよっている。屈折しながら、葛藤しながら、だから孤独で、空白が生じる。すこし淋しい7つの物語。

2014/08/14

かみぶくろ

さすが平野啓一郎と唸ってしまうような短編群。この人の特徴はやはり全てを見透かしているような明晰さだろう。相変わらずむちゃくちゃ頭良いなこの人ってのが率直な感想。不可思議で虚構色の強い物語たちはどれも印象深く魅力的である。通低するテーマは人間の認識の曖昧さとでも言えそうだが、そこから時間論、他者性、アイデンティティなど様々なテーマへと派生し、読者を認識の迷宮へといざなう。作品毎に文体を変える著者だが、その質の高さゆえなんとなく共通する平野色が滲み出てしまうのは面白い皮肉である。

2015/06/12

Ikutan

平野さんの短編集は初めて。表題作の『透明な迷宮』では、ブダペストで衣服を奪われて監禁され、見物人の前で愛し合うことを強要された主人公の屈辱とその後の心の揺れが繊細に描かれる。『消えた蜜蜂』は特殊な能力を持った郵便配達員の物語。小川洋子さんのような美しくも歪な世界に独特な余韻が漂う。『family after』では、とんでもない遺品に翻弄される娘と孫に、どうなることかとハラハラ。『火色の琥珀』は火に欲情する男の物語。炎って確かに少し官能的だな。朝井さんの『正欲』を思い出した。刺激的な装画はムンクの『接吻』。

2022/08/22

優希

不思議な雰囲気の漂う短編集でした。うたた寝をしているときに見たほのかな夢のような世界が広がっています。内面を深く表現し、官能的な魅力を醸し出しています。皆、何処かに迷っていて、様々な「何か」から逃れられないでいるように感じます。この物語自体が見えない迷宮だと思います。

2014/12/28

konoha

独特の味わいがある短編集。「ある男」が好きなので、他人の筆跡を真似できる郵便配達員を書く「消えた蜜蜂」のミステリアスな導入にドキドキした。寓話のような世界観に引き込まれる。昔の日本映画のような雰囲気の「family affair」、火に恋し続ける男の「火色の琥珀」も良かった。表題作は誰かを愛するとはどういうことか考えさせられる。最後の話は設定が面白いけど難しかった。平野さんの発想とそれを物語に仕上げる知識や表現がすごい。狂気と紙一重の世界でも説得力がある。

2022/08/17

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