エストニア紀行: 森の苔・庭の木漏れ日・海の葦
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エストニア紀行: 森の苔・庭の木漏れ日・海の葦 / 感想・レビュー
ヴェネツィア
エストニアには是非行ってみたいものの、描けるイメージは中世都市タリンの旧市街くらいしか思い浮かばない。本書を読んで初めてエストニアにはヨーロッパ最大の野生動植物の聖地があるということを知った。ヨーロッパバイソン、モウコノウマ、イヌワシ、オジロワシが見られるという。ただ、そうなったのはチェルノブイリの原発事故の放射能汚染によって人間が立ち入れなくなったからだという。たしかに野生動物の存続にとっては、人間こそが最大の敵であるのかもしれない。眼を開かれることの多い本書だが、駆け足の取材旅行だったのが残念だ。
2013/11/13
Gotoran
地理・世界史でしか知らなかったエストニア。バルト海に面し、ポーランド(飛地のロシア)とロシアの間に位置するバルト3国のひとつ。そこを数日間取材した旅行・紀行記。森・鳥・海、自然と共に生きる人々との交流を通して、著者独特の豊かな感性と視点で感じ・考えたことを綴る。美しい文章の中にも、鋭い洞察と熱い思いを感じ取ることが出来る。梨木香歩固有の世界観を堪能した。巻末のエストニア人に愛されているという歌「我が祖国は我が愛」(梨木訳)がエストニア人の“こころ”を端的に表しているのではないかと感じた。
2014/07/27
榊原 香織
馴染みのない国なので、途中で、ラトヴィアだったかしらん、と表紙を見直す。 地図と、写真もっと欲しかった。 コウノトリに出会いたかったらしいが、それなら兵庫県の豊岡市行くと割といるのに
2022/09/19
キムチ
ひょいと虜になった梨木さん。小説の姿もいいがエッセーはその人の内省が素敵に独り歩きする。狙い通り、小説とは異なる彼女が独特なスタイルで視、聴き、語っていた。スウェーデン、独、露の3国の掌で転がされてきたエストニア。未だに独の中世を思わせるとある。自然が豊かに輝き、海・森・鳥が生を謳歌する饗宴をかいまみせてくれる。中に挟まれているカラー写真は香歩さんの言葉そのもの。静かに逞しい国、リーマンショック後の世界経済の中で自給自足の誇らしさを呟く機織りのおばあさん。薄い1冊だが、読み進むと頁に翼が生え広大な眺望が先
2020/08/13
Gemi
エストニアと聞いて何も浮かばなかった。どの辺だろうと調べてみる。ラトビア、リトアニアの北に位置し、スカンジナビア半島も近くバルト海を挟んでフィンランドのヘルシンキを北に見る。ロシアのモスクワが西側にある国。正直そこまで興味のない国だった。梨木さんの名前で読んだ本。序盤はなんだか印象の薄い旅物だなと思っていたが、中盤から著者の空想世界で面白くなってきた。森の入り口かどこかで全体的に緑で陰影が美しい最初の1枚の写真がとても静謐で神秘的だった。そして終盤は自然について考えさせられる。訪れてみたい国になった。
2017/01/21
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