KADOKAWA Group

Facebook X(旧Twitter) LINE はてブ Instagram Pinterest

丹生都比売: 梨木香歩作品集

丹生都比売: 梨木香歩作品集

丹生都比売: 梨木香歩作品集

作家
梨木香歩
出版社
新潮社
発売日
2014-09-30
ISBN
9784104299102
amazonで購入する Kindle版を購入する

丹生都比売: 梨木香歩作品集 / 感想・レビュー

powerd by 読書メーター

風眠

夢と現を行きつ戻りつしているような、うつらうつらとした美しい物語たち。殊更にドラマチックではなくとも「私」と「どこか」は繋がっていて、目には見えない壮大な何かが静かに沁み渡るよう。「私は、そこに、いたのだ。ーーー胸奥の深い森へと還って行くものがたり。」という帯の文そのままの短篇集。小さな女の子の心と体の成長をガンダムモビルスーツと春と夏で表現した『夏の朝』。美しく荘厳な宇宙を描いた草壁皇子の物語『丹生都比売』。姉妹でお揃いのコートを順に重ねていくことで死別という哀しみを表現した『コート』の3篇が特に好き。

2014/10/30

文庫フリーク@灯れ松明の火

ミステリーに「日常の謎」というジャンルがあるなら、この作品集は極めて鮮度の高い、かぶりつくと芳醇な果汁が溢るる「日常の幻想」 私の家の近くに池は無いが堰なら有る。カコは釣れるだろうか?化石のようなカコは小さな人魚に戻ってローレライを歌ってくれるだろうか?「カコの話」 姉とお揃いだったコートを、幼い頃の小さなサイズから順繰りに着せこむ。裾のかすかなたるみは私が姉にしがみついていた跡。「おねぇちゃん」の言葉に、北村薫さんの『夜の蝉』が浮かぶ。「コート」 もしも何かにぶつかる度に、衝撃で身体が欠落して→ 

2014/10/16

ちはや@灯れ松明の火

一羽の鳥が飛ぶためにいくつ生命がいるだろう。流れる水のうたう声、土は炎に炙られて水で洗われ水銀に、ぬばたまの闇にきらめく星となる。血で繋がれて血で塗り潰される貴い縁、ただ遺そうと願うゆえ。苛烈な夏に晒されてやわらかな草は萎れゆく、求める姿になれないと。花が一輪咲くまでにどれだけの葉が落ちるのか。移ろう水のおどる音、生命を救う丹薬も生命を奪う猛毒も、水銀の星から出でて散ったもの。月に焦がれた潮がさざめく、過去を湛えた池がささやく。天土を統べる君がため、生も死も清けき水にとけあって、かの地の裡によみがえる。

2015/01/31

みっちゃん

読み終わり、暫くぼお〜っとしていた。美しい夢を見た後のような。大事な啓示を受けたように思うのに、巧く言い表せられぬ自分がもどかしい。作者は、現世の日常のあちこちに、あちらの世界への扉をいとも簡単に見つけ、易々と開けてしまう種族の一員に違いあるまい。美しい表題作にも心が震えたが、少女夏を見守る「わたし」の正体に胸が熱くなり、およそ梨木作品とは縁遠そうな「モビルスーツ」の比喩の巧みさに唸らされた【夏の朝】が一番好きだ。

2015/09/14

なゆ

掌編あり中編ありで長さもいろいろな珠玉の短編集。静かに、穏やかに、どこか異界を思わせるものがあったり、渡り鳥を思わせるもの、旅、本、蔓、どこを切り取っても梨木さんならではの世界が。なかでも、表題作「丹生都比売」が読めたことが嬉しい。とても寂しく切ない話だったけれども。「カコの話」の不思議で面白くてちょっとヒヤッとする感じ。「コート」の5ページに濃縮された、姉妹の想い。「夏の朝」のラスト7行の清冽さ。話それぞれが様々にひそやかに煌めいて、なんと豪華な作品集だろう。潔いほどにシンプルな装丁が心地よい。

2014/11/14

感想・レビューをもっと見る