ここに物語が
ここに物語が / 感想・レビュー
アキ
2002年から2021年までの書評を中心とした評論文。豊かな感受性と生態系に興味を持ち、旅が好きで、何冊かの絵本や児童文学を出版されているだけに、ここで紹介されている本は読んでみたくなるものばかり。何冊かは本の巻末の解説文なので、本を読んだ後にまた会えそう。良質なブックガイドとして使えそう。「アラン島ほか」ジョン・M・シング、「洟をたらした神」吉野せい、「はじめての暗渠散歩」本田創、「シーカヤック・ハンドブック」内田正洋、「小島の春」小川正子、「きょうはマラカスのひ」「きこえる?」絵本などが気になった。
2022/04/30
keroppi
梨木香歩さんの本にまつわるエッセイ。語られる本は、見事に私は読んでいないものがほとんど。知らない物語の数々は、小さきものたちや弱きものたちへ向ける梨木さんの暖かで確かな眼差しに浮かび上がってくる。読みたい本が色々出てくる。ここに物語があるんだなぁ。「チェルノブイリの祈り」にコロナ禍の現状を照らし合わせ、今の時代とこれからを語る視点も梨木さんらしいなと思った。
2021/12/03
藤月はな(灯れ松明の火)
梨木香歩さんのまだまだ、自分が浅薄で無知であると痛感せざるを得ない。救頼運動という善意が齎す「個としての自由」への暴力性、自然に対しての米国のフロンティア精神と里山という概念の違い、英国では悪役と捉えられがちなアナグマへの眼差しなど、知る事も考える事もなかった事をしっかりと書いているからだ。そして「ハテルマ シキナ」という絵本の存在をこの本で初めて知り、「こころ」で蔑ろにされた「お嬢さん=静さん」への眼差しに改めて瞠目するしかないのだ。また、「椿宿の辺り」での暗渠への思想の根幹もこの本で見つけて嬉しい。
2022/03/08
Ikutan
新聞や雑誌に掲載された書評や本に纏わるエッセイ。ひとつひとつの作品に丁寧に向き合い、奥深くまで味わい、そしてそんな読書体験を親しみやすい言葉で綴ってくれる梨木さんの真摯な姿勢が伝わってきます。印象に残ったのは、ハンセン病患者に対する不当な強制隔離政策と、それを肯定した当時の数々の書物に対する怒り。これはコロナ禍の現在でも通じることで、どんな時代でも、鵜呑みにせず、考えることの大切さを痛感させられますね。手記『わだつみのこえ消えることなく』の作者和田稔さんのことを綴った内容も、考えさせられることが多かった。
2021/12/08
しゃが
梨木さんらしい眼差しが感じられた。梨木さんの創る者・読む者として本に寄り添う生きかたを語るエッセイ集。語られる本が読んだことがあったら何となく喜び、全く知らなかった本には「読みたい」を刺激され、それもミーハー的でなく、私の心の奥に届くような…。梨木さんの「本」への深く真摯な思いが伝わった。いかに私の読書が浅く物としての読書であったかと思い知らされたが、今後も嗜好品としての読書はやめられない。
2021/11/29
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