どこから行っても遠い町
どこから行っても遠い町 / 感想・レビュー
nico🐬波待ち中
東京のとある商店街を舞台に、そこに住む人々が緩やかに繋がる連作短編集。みんなの繋がりにほっこりしたり切なくなったり。魚屋「魚春」の平蔵と平蔵の妻・真紀、真紀の愛人・源二の奇妙な関係には一言では言えない想いが込み上げる。人は一人で生きている訳ではなく、他の誰かとの関わりの中で生かされている。例え亡くなっても誰かの記憶に留まる限り、亡き人は生き続けていられる。物語の最後の真紀の言葉に胸がつまる。人と人との縁は異なもの。関わりのない人だと思っていても、案外どこかで繋がりがあるものだ、と温かな気持ちで噛みしめる。
2018/05/05
kariya
何処かにはあるようでどこでもない町と住んでいる人々。住人の誰彼は古くからの知り合いで、あるいは最近越してきた常連で、もしくはかつての道ならぬ恋の相手で。この作者らしく曖昧なようでいて生々しいような不思議な空気感の中で、笑い怒り生きて死ぬ人々の姿は、見知った誰かのようでもあり、永遠に知り得ない他人のようでもある。だが思いがけない語り手と静かに深い余韻を残す最終話の後で、ここは誰もの持つ記憶の絡み合った編み目の底に存在する町ではなかったかと気付く。どこより遠く、どこより近く。
2009/11/04
ミナコ@灯れ松明の火
日常と非日常の、地続きになったふたつの世界の境界あたりをふらーりふらーりとたゆたうような短編集。同じ町に住むそれぞれの登場人物たちは、皆自分たちのことを「ふつう」と自覚している。普通な彼らに潜む普通ではない一面が、確かにここではない、どこから行っても遠い場所を感じさせた。短編同士のリンクがまた面白い。一見「脇役」の人たちにも、それぞれ主役の人生があり、それぞれの物語があるのだという当たり前のことが、何だか心を温かくさせてくれた。
2012/02/07
Kajitt22
郊外の、よくありそうな商店街を舞台にした、連作短編集かと思って読んでいると、やられる。少し読むと、奇妙な人のつながりに気づいて、次の一編はどこにつながっているのかを探している自分がいる。終盤になると、蛇も出てきて、この小説はきつねかたぬきのように一気に正体をあらわし、川上ワールドがさく裂する。最後は死者が主人公になり、生き残った人の中の自分の記憶について静かに思いをはせる。人間の存在とはそういうものかもしれない。『蛇を踏む』以来この人は唯一無二の作家だ。なぜか途中止めになった『真鶴』に再挑戦してみよう。
2015/11/16
はつばあば
あほや~( ;∀;)。2015年に文庫本で読了しているのに、今単行本が届きました(;´∀`)。はぁ・・・そりゃ6年前のことですから仕方ないけれど、ちゃんと文庫でレビューが・・見落とした私が悪い( ;∀;)。
2021/08/24
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