なめらかで熱くて甘苦しくて
なめらかで熱くて甘苦しくて / 感想・レビュー
ヴェネツィア
2008年から2012年にかけて「新潮」に発表された連作短編集。最後の"mundus"だけは他と趣きを異にするが、タイトルの付け方からすれば作家には一連のものという意識があったのだろう。いずれの短篇でも、基本的には人間の心と、その入れ物である身体を語っている。篇中で最も直接的なのは"aerだろう。そこでは「どうぶつ」としての人間(あるいは女)が描かれる。この作品に限らないが、いずれも何かもの哀しさがつきまとう。"mundus"にしても、人間が宿命的に背負わざるを得ない、得体の知れなさの表現なのだろう。
2014/02/12
ミカママ
うぅぅぅん、わからん。『センセイ』とかコレとか、感覚的に合わない作家さんなんだな。
2016/11/28
あつひめ
セックスで心の渇きは満たされない…。でも、体のなかの穴という穴、ちょっとした隙間まで空っぽになったとき、やはり人は自分以外の体温を求めるのかもしれない。抽象的な表現の中に女にしか感じられないざわめきや、波のようにやって来る感情の昂りが描かれている気がする。「aer」がとても印象に残った。子供を宿したときの我が腹の中は小宇宙のような不思議な感覚。出てきたしろものの成長の不思議。男には残念ながら感じられないムズムズ感かもしれない。甘美な昂りを求める声が言葉の羅列の影に並んでいる気がする。
2014/07/17
Yunemo
著者と題名に惹かれて手にしてしまった一冊。淡々とした表現のなかに、伝わってくるのは妙な焦りというかもどかしさというか。どうにも読み解けなかった、というのが本音のところでしょうか。分らないけど不思議な感覚、どうにも直截的に理解したいのに、そういう理解をさせてくれない。なかなか味わえない感覚のまま読了。
2013/08/17
優希
体の芯がじんわりと熱く、締め付けられるような感覚に陥りました。何かを求めるような甘美な甘い世界が全編を貫いているのに、各短編は乾きを求めるような苦しさがあるような気がします。濃密な中に自分以外の体温を求めているように思いました。なめらかで熱くて、だからこそ渇きの苦しみが存在しているのでしょう。昂揚する感情、性欲のメタファーのようなタイトル。それでも世俗的にならない官能の世界を描き出しているのが流石です。こんなに詰まり、胸に迫る短編集はなかなかないでしょう。世界観がとても好きです。
2014/08/08
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