フィンガーボウルの話のつづき
フィンガーボウルの話のつづき / 感想・レビュー
masa@レビューお休み中
まるでモビールのようだ。それぞれの形態、色調、材質といったものはバラバラで統一の欠片もない。あるものの下に糸がぶら下がり、また別のあるものがくっつく。違和感も、不自然さも伴うのに、最終的にはバランスがとれた美しい形状へと変化する。これは、きっとひとつの物語だけでは足りないのだ。複数の物語が並べられることで味わいの深いものとなり、何か心に引っかかりをもたらすものへと変貌するのだ。美しいものを、ただ美しいとはいわない。面白いものを、ただ面白いとはいわない。そこが吉田篤弘の妙味なのだろうなぁ。
2013/01/06
あんこ
再読の再読。こちらも約一年ぶり。とても短いお話の集まりです。静かで、揺さぶられるようなものは何もないささやかな呟きのような物語が散りばめられています。poeticな短編集です。どのお話も最後の数行に惹かれるものがあります。何度も読みたくなる吉田さんの作品のひとつ。
2014/06/20
kinkin
うーん、いつもの吉田篤弘さんの魔術のような物語りと話の展開に魅了されました。私もビートルズの「ホワイト・アルバム」をレコードで持っていたので、その話も懐かしかった。ジョン・レノンを待たせた男という話に出てきた叔父さんの部屋、見てみたいです。出来ることなら、星の見える山の別荘で静かに読んでみたい本。
2014/05/01
*maru*
「夢」とは人が寄りかかった途端「儚い」という字になる…。消息不明のイギリス人作家、ジョン・レノンを待たせた男、予告編ばかりの映画や博物館、詩人やラジオDJ。「世界の果てにある食堂」の物語を書きあぐねる吉田さんと、16話の物語たち。物語の鍵は…ビートルズの「ホワイト・アルバム」。吉田さんの魔法にかかれば塩やレインコートだって誇らしげな主役の顔になり、些細な日常にぱっと灯がともる。“吉田の半分は優しさで出来ています”。半分どころじゃありません。速く効いて人に優しい、痛みと疲れにはバファリンより吉田。効きます。
2018/01/28
風眠
フィンガーボウルに思いを馳せて、世界の果てにある食堂の物語を書こうとしている一人の作家から始まる物語。16編の連作短編がビートルズの『ホワイトアルバム』で、ゆるっと繋がっているのが素敵だ。余白を見るとそこに、何かを書きたくなってしまう詩人の物語『白鯨詩人』、歌で生活できるようになったけれど、音楽を始めた頃の気持ちを振り返って今の自分に迷う『ハッピーソング』が特に好き。日常からちょっと離れた非日常にふわりと漂い、身を任せるような雰囲気が心地よい一冊。文字を使ったアート作品みたいな本、すみずみまでオシャレ!
2013/01/30
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