針がとぶ Goodbye Porkpie Hat
針がとぶ Goodbye Porkpie Hat / 感想・レビュー
紫 綺
物語のない物語。叙事詩的な、それでいて夢の世界をさ迷っているような読後感が、何とも心地いい。短編なのに微妙にリンクしているところもなかなか。
2015/09/05
れみ
伯母の遺したレコード、ホテルのクロークに一着だけ残されたコート、遊園地の駐車場に現れる猫、ある半島の小さな村の白い家で四方に砕け散る月、…バラバラのようで繋がっていたりする7つのお話。寝る前のほんのわずかな時間に、一話か二話くらいずつ読み進んで、あ…ここは(この人は)知ってる…と気づくのだったりハッとするような言葉に出会えるのが楽しみだった。とくに表題作と「パスパルトゥ」のそれぞれ最後の一行がすごく好き。
2017/03/31
キジネコ
クラフトエヴィングの本は、いつも楽しい。小川洋子さんの解説がついた中公文庫版ではなく新潮版が読まれる時を待って本棚で何年も待っていました。物語には出会うべき時があるのかも知れない、と不思議を思う今夜です。海辺で焚火をする鳥は鴎か、それとも家鴨か…ミヒャエル・ゾーバの表紙絵から「随分待たせるねえ」の声と波の音がしました。明日何が起きるか分からないと云いつつ昨日と同じ今日を生きる安堵を退屈と云ってしまう時、心の何処かで変哲の囁きが聞こえてくる。視座を少しずらせば世界は少しづつ違って見える筈、と作家は云う。
2017/05/19
瑪瑙(サードニックス)
凄く静かで詩的な作品でした。正に『針がとぶ』ような感覚になります。短編が並んでいるだけのように見せながら、(針がとんで)少しずつリンクして、長編のように繋がっているお話でした。何回も読み返してみたくなるお話で、私は好きです。
2016/03/30
emi
ミニシアターで上映されている古き良き時代の小粋なヨーロッパ映画を観終えたような気持ちが、読了後じんわりとわいてきました。誰もが気軽に海外に行けなかった頃のヨーロッパ、という印象です。これは不思議さを漂わせる短篇集なのですが、全然違う話が少しずつつながってくるという作りで、クラフト・エヴィング商會らしい世界に気持ち良く浸れる作品。いいなぁ、私はとても気に入りました。特にレコードやラジオといったアイテムへの愛着を感じられます。疲れがたまってる時や、寝る前、食後などのゆったりしている時に読むのがオススメです。
2015/06/16
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