さよならクリストファー・ロビン
さよならクリストファー・ロビン / 感想・レビュー
優希
孤独と孤独の中にいる人たちを穏やかに結ぶような短編集でした。最後に残った寂しさ。死なない者たちには皆「虚無」という物語があって、それが切なかったです。優しい空気が流れているのに胸を締め付ける物哀しさを感じました。少しずつ消えていき、失われていく。ひとつひとつ異なる世界ながら全体的につながる雰囲気が美しかった。「お話」を軸にして現実と虚構がわからなくなっていくけれど、そういう不思議な空気に浸るのが心地よくもありました。
2016/11/22
アナーキー靴下
幼い頃人体図鑑で「脳が命令を出して体を動かしている」と知り、何故「走れ」と思っても足が走ってくれないのか不思議だった。とはいえ「脳の命令」と「思う」ことは別次元の事柄なのだろうと、その疑問は何処かに追いやってしまった。この本を読み、それは謎の真髄の見誤り、問いの立て方が適切でなかったのだと理解する。「私とは何か」「それはいったい何処に存在するのか」知りたかったのはそういうことなのだ。そしてイマジナリーフレンドとは自己そのもの、自分の中にしか存在し得ない私を客観視するための、ある種の二重思考訓練だったのだ。
2022/09/30
ベイマックス
図書館本。なるほどね。いくつかの少年少女向け小説のいわゆるオマージュなのかな? 元の話しがわからないと、???って感じです。題名にそそられて借りてみたんだけどね。クリストファーロビンだから、くまのプーさんを高橋源一郎氏がどう料理するのか楽しみだったけどな。
2020/08/29
masa
ここは物語の中なんじゃないか。幼い頃から何度も夢想した。だって都合が良すぎるから。奇跡を繰り返し僕が生き永らえているということが。あんなにも求めた自由は束縛からの解放ではなかった。何でもできるは何をしていいかわからないことだった。束縛があるからこその自由だったのさ。そしていつしかみんな自由に縛られた。手をあげろ!BANG!悪魔の手には自由を手に入れるための銃。神が手にした銃に奪われる自由。その夜あなたは境界線のどちら側でこの物語を綴るのだろう。僕はもう空の向こうに飛び立ってしまいたい。あなたを想いながら。
2021/05/01
風眠
とても不思議な雰囲気の短編集。ファンタジーとSFとアトムとA.A.ミルンへのオマージュ、という感じ。どの物語も「何か」を喪うことがベースにあって、どの物語も等しく淋しい。『御伽草子』と『アトム』が特に好みだった。これは常に手元に置いて、ちょこちょこ拾い読みしたい感じ。ぜひ文庫化してほしい。
2012/06/01
感想・レビューをもっと見る