ベッドサイド・マーダーケース
ベッドサイド・マーダーケース / 感想・レビュー
藤月はな(灯れ松明の火)
隣で寝ていた妻が首を切られて殺害されていた。書き置かれた「ワスレルナ」。誰が、なぜ、どういう意味で。しかし、ミステリーと思いきや放射能で汚染された世界でのSFだったという様相をみせたこの本。「一部だけ誇張された情報に右往左往する中、身近な恐怖には目を向けない」というメッセージ性があるがそれにしても登場人物が「人」ではなく、「舞台上の役割を割り当てられた駒」といった感が強くて余計に彼らの気持ちが蔑ろにされた感が否めません。ジェノサイド現象は多重人格探偵サイコでのルーシー・モノストーン現象に被ります。
2014/02/25
ちょん
相変わらず難しい佐藤友哉の世界。いつもよりは読みやすいし、いつもよりは頭に入ってきやすい。放射能汚染された土地。放射児を産ませないために、妊婦を殺していく医師。妻子を殺され復讐に立ち向かう遺族。国の嘘、真実は何か。わからないことばかりだが、親が子を子が親を思う気持ちには嘘がなかった気がする。
2014/02/21
くみこ
原発の大災厄を経た未来で、連続する主婦殺し。妻を殺された夫達は復讐を誓い、犯人を追い、真相に近づくにつれて恐怖に直面します。犯人と、事件を黙認する国の目的が見え始めた頃、町はジェノサイドの地獄と化します。絶望的な状況下で個人の内面が描かれる中、父と息子の情愛が、少しだけ温かい。ストーリーはテンポ良く、現代社会への警鐘を織り交ぜながら進みます。ここに、未来への希望の兆しはありません。今という時代から未来を描くと、簡単に希望は示せないって事でしょうか。「ワスレルナ」、3・11震災後ディストピア小説。
2020/07/19
しろ
☆6 ミステリかと思いきや、ディストピア系のSFだった。いろいろと異色の作品で、スムーズに超展開になるって感じ。妊婦が連続で寝室にて殺されるという事件から、放射能が絡み、社会のコントロールの仕組みなどが表されていく。著者の作品だからマトモではないのだけど、今作は思想的というか、エンタメ度は少なかったと思う。二段組みでちょっと凝った装丁なのが気になった。
2014/02/02
なしかれー
密かに起こる連続主婦首切殺人の話。3.11以後『星の海へむけての夜想曲』、『1000年後に生き残るための青春小説講座』と書いてきた佐藤友哉が、青春汁が枯れきってしまったと言いながらも1000年後を想い、絶望と希望を勢いのまま書き殴ったような怪作。正直とっ散らかってる感じは否めないけれど、「ワスレルナ」と繰り返される言葉は胸に染み込んでくる。この作品をミステリとして売り出す出版社の意図はわからないけれど、ある程度覚悟を持って読むべき作品だと思う。ガイガーカウンターは以前より手に入りやすくなっているのかな。
2014/01/19
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