天国旅行
天国旅行 / 感想・レビュー
hiro
しをんさんの“心中”がテーマの短編集。読む前は正直、テーマと短編集ということで、それほど期待はしていなかった。しかし、読み始めてみると、しをんさんらしくユーモアを忘れず、男の友情?があり、もちろん怖い話、ファンタジーな話、ハートフルな話もありと非常にバラエティにとんでいて、流石しをんさんと唸りたくなる粒ぞろいの短編集だった。今まで読んだ短編集の中で、これだけ粒ぞろいの作品は、森絵都さんの直木賞受賞作「風に舞いあがるビニールシート」以来だった。7編の中でも、特に『初盆の客』と『星くずドライブ』が良かった。
2012/05/04
takaC
テーマが「心中」と共通でも、各編アプローチがバラエティに富んでいて面白かった。数人の書き手による競作みたいな感じで。
2010/11/22
エンブレムT
重く湿った空気を感じさせる7つの物語が収録された短編集。「心中」をテーマにしているので、どの物語にも死をまといつかせた情念のような熱がこもっている。が、決して暗くはなりすぎないという、不思議な読後感でした。死に場所を求め彷徨う姿は、生きる道を捜し求めている姿にも見えるのだ。様々な形の「心中」が描かれてますが、含みを持たせ想像の余地があるため、読み手の受け取り方によってかなり印象が違ってくる気がします。「SINK」の、足首を掴む冷たい手の真実は、最後に紡がれた信頼と希望に満ちた物語であったのだと信じたい。
2010/11/18
mikea
心中をテーマにした短編集。まさにこの本の装丁のようなまっ黒しをんが詰まっています。「遺言」や「初盆の客」は、個人的に、夫婦愛、家族愛が感じられるお話でした。「SINK」はどこか「光」に共通するような暗さ、冷たさを感じる話で、読解できないところもあります。読後明るい気分にはなれないけど、この本を何度か再読してみたい。イエモンの「天国旅行」も聴いてみようと思います。
2012/03/08
とら
良い気持ちで心中って、そんなことあるもんだろうかwでもそれを描いてしまうのがしをんさんなんだなあ。正直な所、暗くて、正に心中!って話よりも、心が温まる話の方が好きです。でも、7編全てが忘れられない話となりました。心中にも、人それぞれちゃんとそこまでしなければならかかった理由があるのです。自分で決めたことだし、だから心中することが駄目とは言いません。心中することで、幸せになれる人もいることでしょう。そう、天国に旅行しに行くだけなのです。改めて、しをんさんの世界観の広さに驚きました!
2011/08/16
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