悪意の手記
悪意の手記 / 感想・レビュー
kaizen@名古屋de朝活読書会
新潮文庫100冊2013 こんなに暗い話を、なぜ、書き続けるのだろう。2度ほど途中で読み進むのを断念した。帯に「死への恐怖、悪意と暴力、殺人の誘惑」「究極のテーマに正面から立ち向かう」「芥川賞作家の野心作」最後まで読んでみると、何人かの人間性を描写しようとしていた意図は分かった。自分では元気がないときには、読まないことに決めた。
2013/07/02
れみ
大病を患った主人公が死の恐怖に苛まれた結果、殺人を犯したこと、その事実を抱えて生きる日々のお話。何とも言えない鬱々とした絶望的な空気が漂っていたけど、主人公には少ないながら自分を思ってくれる存在が近くにあったのがわずかな救い。
2018/02/05
とろこ
生きていると、突如、自分の意志では制御できない、暴力的な出来事を経験することがある。この小説では、それは重い病だが、現実では、事故や自然災害がそれに当たるだろう。そんな圧倒的な現実を前にして、それでも希望を見出し前向きに生きようとするか、絶望するか。主人公は、一見絶望しているように見えるが、一縷の望みを抱いているように思える。自分が生きる為に親友に手をかけた行為は、「悪」とみなされるが、そもそも「善」と「悪」とは何なのか。生への執着と死への憧憬。一見相反する思念は、形を変えた同一のものなのかもしれない。
2017/08/18
めしいらず
大義を背負った戦争から帰還した米兵の16%がPTSDを発症しているらしい。人が人を殺めるとはどういうことか。それを抱えて生きることとは。「その時」の心のありよう。動機とは大義を持たぬ殺人者を排除する為に社会が用意した言い訳だ。彼らが良心に呵責を感じるか否かはそれぞれだけど、殆どの者はまざまざと蘇る「あの時」の光景とその実感に終生苛まれる。主人公が辿る転落、蝕まれた心の圧倒的リアリティ。悪意に逃げ込む卑劣で責め苦を抑えようとする彼に、思いもよらぬ形で寄せられる善意。誰も悪にはなり切れない。目が離せぬ物語。
2016/01/17
mizuki
人の心に穴を開けてしまうような出来事は誰にでも起ります。それは孤独が関係していて、きっかけは家族や友達、社会なのでしょう。「なぜ人を殺してはいけないのか⁇」講師が大学生へ質問をするシーンがあります。私は今まで考えたこともなかった問いに対する答えがすぐには出てきませんでした。でも著書を最後まで読み、何となくですが答えが見えてきたような気がします。ニュースで見た殺人事件。あれは社会が生み出した悪だったのですね。全ての子どもが豊かな心を育める日本になる日は、いつやってくるのでしょうか。
2016/08/22
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