赦す人
赦す人 / 感想・レビュー
utinopoti27
団鬼六という生き方。「真面目にコツコツ働くなんてアホのやることや。男なら相場で儲けて遊んで暮らせ」こんな父親の薫陶を受けた鬼六の破天荒な生涯を、膨大かつ緻密な取材で綴る本書は、「聖の青春」と並ぶ作者渾身の評伝。異才のSM作家として一時代を築くも、稼いだお金は悉く散財してしまう。何度失敗しても同じ繰り返しの果てに彼が辿り着いた境地とは・・。特に終盤、あの小池重明との出会いには、将棋雑誌編集長だった大崎さんの筆に鬼神が宿ったかのよう。淡々とした筆致の中に、鬼六の限りない人間愛を熱く伝える名著に出会えました。
2017/11/26
そうたそ
★★★☆☆ SM小説を文学として昇華させ、なおかつ市民権を与えたといっても過言ではない偉業を残した団鬼六の評伝。「団鬼六」というインパクト十分な名前を見たり聞いたりしたことは勿論あるが、その作品を読んだことはないし、為人もよく知らない。そういう意味では何だか怖そうな名前のイメージばかりが先行していたのだが、こうして団鬼六の生きざまに触れてみると、想像とは全く異なる、波乱万丈な生き方ながらユーモアあふれる人柄、優しさに満ちた言動の数々がすごく魅力的に思われた。大崎さんだからこそ書きえた作品ではないだろうか。
2015/10/16
i-miya
2013.01.27(未読)大崎善生著。 読んだわけではありません、今日の日経新聞、読書書評欄からです。 『豊かな人生経験と独特の勝負勘』-英文学者若島正。 力将棋、という言葉がある。 「将棋ジャーナル」という雑誌に、全財産をつぎ込んで、失敗した。 「鬼」こと、団鬼六、SM作家、『花と蛇』。 その生涯も、作家活動も、いわば、力将棋だった。 それを綴った評伝、『赦す人』が、面白くないわけがない。 母親、作家のち女優志望。
2013/01/27
Akihiro Nishio
団鬼六は読んだことも映像作品を見たこともないが、大崎さんの優しい文章を読みたくなって読む。自分が女だったら大崎さんを好きになっただろう。さて、鬼六氏であるが、熱量が高く、ちゃらんぽらんで、途方もなく優しい人である。自分がさんざん女遊びをしながら、妻の浮気に激怒し、復讐のためにやくざを使って脅したり、本1冊書き上げるというのだから凄い。エロが書ける人はこれほど独占欲が強いものなのかと舌を巻く。主著である「花と蛇」は全十巻もあるというので厳しい。とりあえず真剣師小池重明を注文した。その後、SM物を何か読もう。
2017/09/01
あじ
作家・大崎善生がSM小説の第一人者・団鬼六の伝記を上梓したノンフィクション。出生からこの世を去るまでの団を丁寧に辿る。団を"赦す人"として描いており、とことん失望させられた人間にも情けをかけ、手を差しのべる姿を懐深く描いている。その一方で繰り返えされる愛人や借金問題といった、開いた口が塞がらないエピソードも多数存在する。起伏の激しい生涯を『快楽主義』で通した団。筋を通す男気に惚れる。そんな彼はどんな筆致で感性で作品を生み出したか。追及し追憶に耽りたくなる読後だ。また彼を取り巻く人々にも心奪われた。
2013/08/11
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